喫茶店 バンブー
希穂子「おいしい。」
音「ここのコーヒーは東京で1番だから。 といっても ほかの店では 飲んだことないんですけどね。フフフフ。」
希穂子「村野さんとは 少しだけ おつきあいをしてたの。」
音「福島で?」
希穂子「私が中居をしてた料亭で知り合って…。」
回想
希穂子の働いていた料亭
希穂子「あっ…。」
鉄男「何か?」
希穂子「あっ いえ…。 お魚 すごくきれいに召し上がると思って。 あっ… 失礼しました。」
鉄男「いや… 何でも 褒められんのは うれしいもんですね。 俺… 家が魚屋だったんです。 子どもの時は ずっと貧乏で。」
希穂子「私の家も貧乏です。 一緒ですね。」
どこかへおデート中の2人
鉄男「希穂子。」
希穂子「うん?」
希穂子「でも… 彼が会社の社長さんと店にいらした時…。」
希穂子の働いていた料亭
堂林「村野君 君は仁美をどう思ってんのかね?」
鉄男「それは…。」
仁美「やめて お父様「村野さん 困ってらっしゃるじゃない。」
堂林「ハハハハ…。 僕はな 村野君 うちの会社を ゆくゆくは 君に任せたいと思ってんだよ。 ほら。」
回想終了
音「縁談が進んどったってこと?」
希穂子「ええ。」
古山家
鉄男「縁談なんてもんじゃねえ 一方的な話なんだ。 折を見て 断るつもりだった。」
裕一「そうだったんだ。」
鉄男「東京さ 行ったらしいと聞いて ずっと捜してた。 優しい女なんだ。 貧しい家に育って 今も 病気の親 抱えて苦労してんのに けなげで 明るくて。
鉄男「彼女といっと ねじくれた気持ちが す~っと消えて 素直になれる。 こんなこと初めてだ。 福島に連れて帰りてえ…。 希穂子と一緒になりてえんだ。」
喫茶店 バンブー
希穂子「結局 ご縁がなかったのよ。 今は ただの知り合い。」
音「本当に? それだけですか?」
希穂子「ええ。 それだけよ。」
古山家
鉄男「ああ~! うわ~!」
裕一「た… 大将…。」
鉄男「最低だ! 俺がグズグズしてっから 希穂子に見限られたんだ!」
裕一「大将…。」
鉄男「俺は どうしようもねえバカだ! ああ~!」
裕一「大将 水飲もう。 水飲もう。」
鉄男「ああ~ 希穂子~!」