(ノック)
園子「蓮子さん。 この事は お兄様には ないしょですよ。 私が叱られるんですからね。」
蓮子「はなちゃん!」
花子「蓮様…。 その髪 どうしたの?」
蓮子「何でもないの。」
花子「何でもないって… 誰かに切られたのね?」
蓮子「それより はなちゃん よく来てくれたわね。 私 赤ちゃんを産んだのよ。 元気な男の子よ。」
花子「おめでとう! 本当によかったわ。 龍一さんも すごく喜んでたわ。」
蓮子「坊やが生まれた事 龍一さんも知っているの?」
花子「ええ。 坊やは… 坊やは どこ?」
蓮子「この家にいるわ。 乳母が面倒を見ていて 私は 会えないけれど。」
花子「そんな…。 どうしてですか? 母親が おなかを痛めて産んだ子に 会わせてもらえないなんて!」
(赤ちゃんの泣き声)
花子「坊やも お母さんに会いたくて 泣いてるじゃないですか! 蓮様 私が連れてくるわ。 ちょっと… 通して下さい。 行かせて下さい!」
園子「わ… 分かりました! 今 連れてきますよ! 本当に… なんて強引な人なのかしら。」
(ドアが閉まる音)
花子「これ… 龍一さんから預かってきたわ。」
蓮子「純平…。 この名前を 龍一さんが…。」
(ドアが開く)
園子「少しだけですよ。」
蓮子「あ… 坊や! まあ…。」
花子「まあ… なんて かわいらしい赤ちゃんなの! よかったわね。 お義母さんに だっこしてもらえて。」
蓮子「純平… お父様が付けて下さったのよ。 すてきな名前ね。 よろしくね 純平。」
<純平君 お母さんに会えてよかったですね。 ごきげんよう。 さようなら。>