英治「ちょっといいかな。」
花子「あ… どうぞ。」
英治「これ… 花子さんに。」
花子「えっ? 『ANNE of AVONLEA』。 『アヴォンリーのアン』? モンゴメリの作品ね!」
英治「そう。 『ANNE of GREEN GABLES』の 続編だよ。」
花子「てっ…。」
英治「梶原さんにお願いして なんとか手に入ったんだ。 古本なんだけどね。」
花子「英治さん…。 ありがとう! 本当は 今すぐにでも 読みたい気持ちだけど 今は やめておくわ。」
英治「どうして?」
花子「まだ スコット先生との約束を 果たせてないから。 この本が出版されるまで 続編を読む事は 取って置くわ。」
英治「君が命懸けで守った本だ。 きっと 出版社が見つかるよ。」
花子「私 絶対に諦めない。 その日が来るまで これは 英治さんが預かっといて。 見たら読みたくなるから。」
(笑い声)
英治「分かった。」
花子「よし。 行ってきます。」
英治「行ってらっしゃい。」
闇市
「頂きます。」
かよの露店
花子「かよ。 忙しそうね。」
かよ「いらっしゃい お姉やん。 どうぞ 座って。 仕事の帰り?」
花子「出版社に 翻訳の原稿を売り込みに 行ってきたんだけど…。」
かよ「また駄目だったの?」
花子「どこの出版社も 売れる見込みのある本を 出版したがっていて 日本で知られていない作家の本は 取り合ってくれないの。」
かよ「そう…。」
花子「こんなに夢のある 面白いお話なのにな…。」
かよ「みんな まだ 食べるので精いっぱいだからね。」
花子「でも こういう時だからこそ 子どもたちは 新しい物語を 求めてる思うんだけど…。」
子どもたち「逃げろ~!」
警官「待たんか~! 待て~! こら クソガキども!」
<当時 戦争で親を失った 子どもたちが 町にあふれていました。>