はな「あ… 兄やん いきなり何でえ? あの男って?」
吉太郎「宮本龍一だ。」
蓮子「吉太郎さん… どうして?」
吉太郎「あなたと あの男じゃ 住む世界が違う!」
蓮子「吉太郎さんは 宮本さんの事 そんなに よくご存じなんですか?」
吉太郎「とにかく もう 会わないで下さい。」
はな「あ… 兄やん!」
(戸が閉まる音)
はな「兄やん…。 どうして…。」
はな「蓮様 『私に会う』って ご主人に嘘をついて その男の人に会っていたの?」
蓮子「ええ。 宮本さんは 演劇をやっていて 脚本を頼まれたの。 それだけのお友達よ。 その人の事は 嫌いじゃないわ。 今日も すごく楽しかった。」
はな「あんな立派なご主人が いらっしゃるのに 何を言っているの…。 石炭王なんて どれだけ 威張ってる方かと思ったけど 気さくで いい方だったわ。」
蓮子「はなちゃんが褒めるなんて 意外だわ。 じゃあ 少しは いいところもあるのかしらね。」
はな「蓮様…。 とにかく 道ならぬ恋だけは してはいけません。」
蓮子「フフフ! 考え過ぎよ! そんな愚かな事は しないわ。 私の事より はなちゃんこそ 村岡さんとの恋は 順調? どうしたの?」
はな「私… あれから 思いを伝えて…。」
蓮子「まあ! その日のうちに いろいろあって… そして 次の日に… 『忘れて下さい』って言われたの。」
蓮子「…えっ?」
はな「つまり 振られたの。」
蓮子「えっ!? どうして?」
はな「『どうして?』って こっちが聞きたいわ。 今 私の胸には こんなに大きな穴が開いてるの。」
蓮子「はなちゃん…。」
村岡印刷
(ノック)
社員「若社長 お客様です。」
英治「どなた?」
蓮子「ごきげんよう。」
英治「蓮子さん…。」
蓮子「ごきげんよう。」
郁弥「どうも 先日は。」
蓮子「ごきげんよう。 村岡さん。」
3人「はい。」
蓮子「こちらの村岡さんと 2人で話がしたいのですが よろしいですか? 本の事で ご相談があって。」
郁弥「どうぞ どうぞ。 あっ どうぞ。 白蓮さん。 次の歌集を出す時は 是非 弊社で刷って下さい。」
平祐「白蓮! あなたが…。」
郁弥「父さん。 見とれてないで。」
平祐「ああ…。」
蓮子「単刀直入に 伺います。」
英治「はい。」
蓮子「『忘れて下さい』なんて どうして おっしゃったの? はなちゃん 今 胸に こんなに 大きな穴が開いてるそうです。 いいんですか? このままで。 はなちゃんを傷つけたままで いいの?」
英治「これ以上 傷つける訳にはいかないんです。」
蓮子「あなた… はなちゃんに 何か隠してる事が あるんじゃない? ちゃんと向き合わないで 逃げるなんて ひきょうよ。 はなちゃんのために こぴっと向き合ってあげて。」