連続テレビ小説「花子とアン」第77回「その恋、忘れられますか?」【第13週】

屋台

龍一「屋台なんか連れてきて 怒られるかと思いましたよ。」

蓮子「あら。 『あなたが いつも行くお店に 連れていってほしい』と 頼んだのは 私だもの。 この おでんもお酒も おいしいわ。 お代わり 頂けますか。」

龍一「『頂けますか』なんて言う客は ここには いませんよ。」

蓮子「じゃあ 何と言うの?」

龍一「おやじ 冷や。」

おやじ「はいよ。」

蓮子「世の中には 私が知らない事が たくさんあるのね…。 何か?」

龍一「まさか 1週間で 書き上げてもらえるとは 思いもしませんでしたよ。」

蓮子「お気に召して?」

龍一「あなたの激情が ひしひしと伝わってきました。」

蓮子「ええ。」

龍一「だが 後半は 変えるべきですね。」

蓮子「え… どうしてよ?」

龍一「なかなかいい脚本ですが 最高にいい脚本ではない。 今のままだと 主人のいる女が 道ならぬ恋に溺れて 心中するという もう何百回と書き古された話で 終わってしまう。」

蓮子「私 一度書いたものは 推敲しない主義なの。」

龍一「白蓮の最高傑作になりそうなんだ。 そんな主義は 捨てて下さい。」

蓮子「おやじ。 冷や。」

おやじ「はいよ。」

蓮子「ほら 私でも注文できたわ!」

龍一「じゃあ その調子で 推敲にも挑戦して下さい。」

蓮子「強情な人。」

龍一「そっちこそ。」

(笑い声)

かよ宅

玄関

(ノック)

蓮子「ごめんください。」

はな「蓮様…。」

蓮子「はなちゃん ごきげんよう。」

はな「ごきげんよう。 どうぞ。」

蓮子「突然来て びっくりさせようと思ったのに あんまり驚いてくれないのね。」

居間

蓮子「はなちゃん… 主人と会ったの?」

はな「ええ…。 心配したわ。 どこにいたの?」

蓮子「ちょっとね。 お友達と会っていたの。」

はな「お友達?」

(戸が開く音)

吉太郎「邪魔するぞ。」

はな「兄やん…。」

蓮子「まあ! お久しぶり! ごきげんよう 吉太郎さん!」

吉太郎「蓮子さん… もう あの男とは 関わらない方がいい。」

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