村岡印刷
郁弥「父さん… 見合いするの?」
平祐「バカ言うな。 英治の見合いだよ。 新しい縁談が次々に来てるんだ。」
英治「断って下さい。」
平祐「英治 お前は 3年間 病気の香澄さんに よく尽くした。 そろそろ 新しい家庭を築いて 子どもを作る事を考えろ。 ほら このお嬢さんなんか 良妻賢母になりそうじゃないか。 会ってみたら どうだ。」
英治「僕は いいです。 郁弥 お前 どうだ?」
郁弥「僕も いいよ。 My better halfは 自分で探すから。」
平祐「全く うちの息子たちは…。」
(ノック)
醍醐「ごきげんよう。 聡文堂です。」
はな「ごきげんよう。」
郁弥「こんにちは。」
平祐「いらっしゃい。」
英治「どうも。 ご無沙汰してます。」
はな「こちらこそ ご無沙汰しております。」
醍醐「突然 押しかけてしまって 申し訳ありません。 今日は お兄様に 仕事のお願いがあって参りました。」
郁弥「あ… 僕じゃなくて 兄に?」
醍醐「ええ そうなんです。 お話し中でしたか?」
郁弥「父が兄に見合いを 勧めてるんですよ。」
醍醐「まあ。」
平祐「君たちも 早く結婚した方が いいんじゃないか?」
醍醐「もちろん いい出会いがあれば。 私たち 仕事に理解のある すてきな男性がいらしたら 明日にでも結婚したいですわ。 ねえ はなさん?」
はな「ええ。」
平祐「そんなに都合のいい男が いるもんか。」
郁弥「父さん 今日は まだ コーヒー飲んでないだろ? カフェーでも行ってきたら?」
平祐「ああ… そうするか。 私は 消えるから 仕事の話を存分にして下さい。 では ごゆっくり。」
英治「失礼しました。 どうぞ お掛け下さい。」
はな「失礼します。 実は この度 宇田川満代先生の 『銀河の乙女』の 単行本を出す事になりまして。 つきましては 村岡さんに 挿絵をお願いしたいんです。」
英治「え… 挿絵を?」
はな「はい。」
醍醐「宇田川先生は 『王子と乞食』の 挿絵を大層 気に入っていらして ああいう絵をお望みなんです。」
英治「はあ… しかし…。」
はな「どうか 引き受けて下さい。 お願いします。」
醍醐「お願いします。」
はな「あの… いかがでしょうか?」
醍醐(心の声)『はなさんの頼みですもの。 きっと引き受けて下さるわ。』
はな(心の声『引き受けてくれるまで 今日は帰らねえぞ。』
郁弥(心の声)『兄さん この人に弱いからなあ…。』
はな(心の声)『きっと引き受けてくれるら…。』
英治「お断りします。」
はな「てっ…。」
<てっ! そんなに 甘くございませんでしたね。 ごきげんよう。 さようなら。>