カフェー・ドミンゴ
玄関前
<おや? 朝市と武じゃありませんか。>
ホール
女給「いらっしゃいませ。」
武「朝市 キョロキョロするじゃねえ。 お上りさんだと思われて バカにされるら。」
朝市「おらたち 正真正銘のお上りさんじゃん。」
武「しっ! 黙ってりゃあ分からんら。」
武「て~っ! 銀座のカフェーの女給って 美人ばっかしだな。 おらに笑顔を振りまいてるじゃん。」
かよ「キャッ!」
武「おねえさん かわいいなあ~。」
かよ「お客さん! ここは そういう店じゃねえから やめてくれちゃ。」
朝市「てっ! かよちゃん?」
かよ「てっ 朝市!」
朝市「久しぶりじゃん!」
<朝市と武は 一体どうして 銀座のカフェーなんかに やって来たのでしょうか。>
朝市「久しぶり!」
かよ「びっくりしたよう。」
かよ「お姉やん。」
武「よう はなたれ。」
朝市「はな!」
はな「てっ… 朝市 どうしたでえ?」
武「朝市は おらのお供だ。 おらは お父様の言いつけで ブドウ酒を東京で売るために来ただ。」
朝市「武が 一人で東京行くの 心細いって言うもんで。 学校も ちょうど冬休みだし。」
武「いや~ 来てみたら 銀座なんて どうって事ねえな!」
はな「…で いつまでいるでえ?」
亜d西市「上野に宿とったから 2~3日は。」
武「この際だから 東京見物もしてえしな。 とりあえず 銀ブラに連れてけし。」
かよ「あの~… 銀ブラの意味 分かってます?」
武「バカにするじゃねえ。 銀座をブラブラするから 銀ブラに決まってるら。」
2人「違います。」
武「てっ?」
朝市「てっ?」
はな「銀座で ブラジルコーヒーを飲むから 銀ブラというんです。」
<それが銀ブラの 本来の意味だという説もあります。>
朝市「すげえなあ。 2人とも すっかり東京になじんでて。」
武「ほ… ほれじゃあ 2人で おらたちを案内しろし!」
かよ「悪いけど 私たち そんなに暇じゃないんです。」
(ドアベル)
はな「宇田川先生 いらしたから ほれじゃ。 ごきげんよう。」
かよ「いらっしゃいませ。」
宇田川「コーヒー。」
かよ「はい。」
宇田川「あの お上りさんたち 知り合い?」
はな「田舎の幼なじみです。」
宇田川「へえ~。」
はな「宇田川先生。 先日は 『銀河の乙女』の原稿 ありがとうございました。 感動的な最終回でした。 編集長たちも大喜びです。 これで 『にじいろ』新春特別号も きっと大評判ですね。」
宇田川「次の連載の依頼なら 当分 忙しいから駄目よ。」
はな「もちろん 次も お願いしたいのですが その前に 『銀河の乙女』を 是非 単行本にしたいんです。」
宇田川「…単行本?」
はな「はい。」
宇田川「話 聞こうじゃないの。」
はな「ありがとうございます。」
回想
朝市「『今度こそ忘れてやる』って どういう意味でえ? はな…。 話してくれちゃ。」
はな「朝市…。 ごめん…。」
回想終了
<朝市は あれから ずっと はなの事が心配だったのです。」