はな「装丁も凝ったものにしたいんです。」
朝市「はな 元気んなってよかったな…。」
かよ「朝市 もしかして お姉やんの事 心配で 様子 見ぃ来ただけ?」
朝市「うん。 あっ おじさんにも はなが元気で仕事してるか 見てきてくれちゃって言われて。」
かよ「おらも 少し前まで心配したけんど お姉やん 今では あのとおり すごく 仕事に燃えてるさ。」
朝市「ほうか。 本当によかったな。」
武「苦え! これが5銭もするだか!」
聡文堂
執務室
醍醐「編集長。」
梶原「ん?」
醍醐「これ。 奥様 お亡くなりになって 半年たつんですね。」
梶原「ああ…。」
醍醐「村岡さん まだ お力 落としていらっしゃいますか?」
梶原「いや… もう忙しそうに働いてるよ。」
醍醐「そうですか。」
(ドアが開く音)
はな「戻りました。」
梶原「これは 宇田川先生!」
宇田川「『銀河の乙女』連載の中で 一番 評判いいんですってねえ。」
梶原「それは もう。」
宇田川「『みみずの女王』がね 早速 単行本にしたいって言うの。」
はな「編集長 是非やらせて下さい。」
梶原「もちろん。 私からも お願いしようと思ってたんです。」
宇田川「じゃあ 早速 取りかかってちょうだい。」
梶原「はい。」
はな「ありがとうございます!」
須藤「(小声で)やるね 安東君。」
三田「(小声で)あいつに 先越されるとは一生の不覚…。」
梶原「単行本の担当は… 安東と醍醐でよろしいですか?」
宇田川「女性編集者だけ? まあ 使えない男の人よりは マシかしら。」
2人「よろしくお願いします!」
宇田川「私 挿絵を描いてもらう人は もう決めてるの。」
梶原「誰ですか?」
宇田川「『王子と乞食』の挿絵 描いてる人。」
三田「はい これですね!」
宇田川「そう。 著名がないけど… 何ていう絵描きさん?」
はな「それは… えっと…。」
醍醐「それを描いたのは 印刷会社の方で 本職の絵描きさんじゃないんです。」
宇田川「構わないわ。 私 創刊号から ずっと気に入っての。 この人に頼んで。 何? その人じゃ駄目なの?」
はな「あ… いえ! この絵 本当にいいですよね。 『銀河の乙女』の物語に合わせて もっと すてきな挿絵を 描いて頂きましょう。 早速 村岡印刷さんに 頼んでみます。」
廊下
醍醐「村岡さんと顔合わせるの 久しぶりね。」
はな「ええ。」
醍醐「はなさんは もう大丈夫?」
はな「醍醐さん。 その節は ご心配おかけしました。 でも もう本当に大丈夫。 今 私の頭の中は 仕事の事でいっぱいなの。」
醍醐「そうみたいね。 翻訳も好評だし その上 宇田川先生の単行本の話まで 進めちゃうなんて。 意外に はなさんって野心家ね。」
はな「野心を持つという事は 楽しい事だわ。 一つの野心を 実現したかと思うと もっと高いところに 別のものが輝いてるんですもの。 人生で とても 張り合いのあるものになるわ。」
醍醐「はなさん…。」
はな「今 私のパルピテーションは 仕事なの。」
醍醐「そうね。 私も負けてられないわ。」
はな「さあ 行きましょう。」
醍醐「ええ。」
<仕事に燃えるのは 結構ですが 恋のパルピテーションは 本当に すっかり 消えてしまったのでしょうか?>