直子「手伝うて。」
「だから 言ったのに。」
「ねっ。」
(2人の笑い声)
直子「何?!」
(2人の笑い声)
糸子「また あとにしようか…。」
<そない思て 店を一回りして 戻ってきたら>
直子「どうも ありがとうございます。」
「ありがとうございます!」
直子「どうも ありがとうございます。」
「ございます!」
糸子「また 怒られてるわ…。」
「ありがとうございます!」
糸子「しゃあないな…。」
<ほんなこんなで 百貨店を3周ほどしてから>
糸子「こんにちは。」
「いらっしゃいませ。」
直子「お母ちゃん!」
糸子「これ…。 直子が いつも お世話になってます。」
直子「お母ちゃん。」
糸子「はあ~ やれやれ やっと着いたわ。」
直子「何や えらい遅かったな どっか 寄っちゃあったん?」
糸子「うん ほんな事も ないけどな フフフッ…。 せやけど あんた ほんま こら 立派な店やんか! へえ!」
直子「まあな。」
糸子「はあ…!」
直子「まあ 上司も うちの才能 認めてくれてるよって 好きに やらしてもうてるわ。」
糸子「うん… ほうか。 うん。」
「こんにちは。」
直子「あ いらっしゃい…。 いらっしゃいませ。」
「あのさ~ 私 こないだ ここで パンタロン 作ってもらったんだけどね。」
直子「はい ありがとうございます。」
「ちょっとさ 作り直してよ。」
直子「え… どうしてですか?」
「歩きにくいったら ないんだから。 あんた よく こんな不良品で お金 取れるわね! どういう神経してんの はっ 信じられない!」
糸子「見せてみ。 見せてみ! あんた こら むちゃや。 別珍を こんな縫い方して。 ほんで また こんなとこへ ポケットつけたら そら歩きにくいわ。 とりあえず このポケット 取り。 ほんでな ここを…。」
直子「ふん。 分かってへんなあ お母ちゃんは。」
糸子「はあ?」
直子「そのポケットが 肝心なんや。 このデザインは このポケットがついて 初めて 完成するんや。」
糸子「アホか。 服が ポケットで 完成するかいな。 服ちゅうんはな 買うた人が気持ちよう着て 初めて完成するんや! ほれ やり直し。 手伝うちゃるさかい。」