小原家
オハラ洋装店
(ミシンの音)
周防「小原さん…。 小原さん?」
糸子「はい。」
周防「あの~ ボタンの事ばってん。」
糸子「はあ?」
周防「背広に付くボタン。」
糸子「はあ ボタン。」
周防「ちょっと2階には ちょうどよかとが なかごたるけん 買いに行きたかとですけど。 ここんに来やったら どこに売っとっとですかね?」
糸子「はあ?」
周防「あ…。 ボタン どこに 売っとっとですか?」
糸子「ああ それやったら 闇市ですわ。」
周防「闇市?」
糸子「うん。」
(せみの鳴き声)
闇市
(闇市の売り声)
<おっちゃんらの言う事なんか アテにならんけど 絶対ありえんとも言えん>
(売り声)
<そいつが 男前なんが 気になりました 奈津のアホは 救いようのない 面食いやったからです>
周防「小原さん?」
小屋
女「ええかげんにしいや! この ごくつぶしが!」
糸子「あ…。 すんません。 あの ボタン買うて 先 帰っといて下さい。」
周防「どげんしたとですか?」
糸子「あの…。 もし うちが 飛び出して行きそうになったら 止めてもらえませんか。」
周防「飛び出す?」
糸子「はあ。 その…。 そこから出て来る 相手によっては うち 飛び出してまうかも しれへんのやけど その 今日は やめといた方が ええと思うんです。 前も うち そんで 失敗してるよって。 うちが 頭に血ぃ上ってしもて どなりまくってしもたよって 相手 逃げてしもて。 そやさかい…。」