なつ「それで 今は お兄ちゃん 新宿にいないの?」
信哉「みたいだな。 今は 行方が分からないって。」
なつ「ふ~ん…。」
照男「な~つ~!」
なつ「あっ 照男兄ちゃん。」
照男「みんな 心配してるから。」
なつ「うん。」
照男「早く来い。 あんたも どうぞ。」
信哉「すみません。」
柴田家
居間
富士子「どうぞ。」
信哉「ありがとうございます。」
(戸が開く音)
なつ「どうしたの? 悠吉さんと菊介さんまで。」
悠吉「いや…。 なっちゃんをね 東京から 連れ戻しに来たんじゃねえかって 夕見子ちゃんが言うもんでさ…。」
なつ「えっ?」
夕見子「その人 家族も同然だった人でしょ?」
菊介「だけど 今更 連れていくなんて 言わんでもらいたいんだわ。 どなたさんかは 分からないけど…。」
なつ「何言ってんのさ 菊介さん。」
明美「なつ姉ちゃん どこにも行かんで!」
なつ「行かんよ。」
信哉「大丈夫です。 そんなことはしません。 そんなことはないので 安心して下さい。 僕は ただ なっちゃんが元気でいることを 確かめたかっただけですから。 あっ… 確かめたかったっていうのは失礼ですね。 ただ それが知りたかったんです。」
悠吉「バカ! おめえが余計なこと言うからだべさ!」
菊介「おやじが騒いだんだろ 力ずくでも 俺が止めてやるって。」
悠吉「力ずくって 何すんだ?」
菊介「知らねえよ。 おやじ言ったんだろ。」
悠吉「黙ってれ!」
信哉「よかった… 本当によかった。 なっちゃんが こんなにも 皆さんから大事にされていて…。 安心しました。 本当によかったです。」
なつ「信さん…。」
富士子「あなたも 本当につらい思いを されてきたんでしょうね。 あなたのことは なつから聞かされてたんだわ。」
信哉「僕は 孤児院で育ちましたが 恵まれていたと思います。 そこにいた指導員の方々に よくしてもらって 自分の将来のことも 大事に思うようにもなりました。」