富子「モモッチ お願いね。」
桃代「はい。」
なつ「あの モモッチさん。」
桃代「え?」
なつ「これ 牛みたいに白黒なんですけど 仲さんが考えた 架空の動物なんでしょうか?」
桃代「ああ パンダでしょ。 中国にいるらしいわよ そういう熊が。」
なつ「熊なんですか! いるんですか 実際に こういうのが…。」
桃代「脚本に書いてあって まあ 誰も見たことはないらしいけど。」
なつ「へえ…。 あの 台本は配られないんでしょうか?」
桃代「台本?」
なつ「はい。 この絵が 一体 どんな話の どのシーンなのか それが分かったら もっと色を塗ってても 気持ちが入ると思うんです。 きっと 楽しいんじゃないでしょうか?」
桃代「脚本はないけど 絵コンテならあるわよ。」
なつ「絵コンテ?」
桃代「うん。 映画の 設計図みたいなものだって。」
なつ「それ見たいです!」」
桃代「あ… 仕上課にも 1冊だけあるから 空いてる時間に見られるわよ。」
なつ「はい。 ありがとうございます。」
桃代「あなた そんなに好きなの? 漫画映画。」
なつ「う~ん 好きって言うほど まだ知らないんです。 だから どんなことでも知りたくて。」
桃代「それが 好きってことじゃないの。」
なつ「モモッチさんは 好きじゃないんですか?」
桃代「好きとか嫌いとか考えたことない。 高校で求人を見て ほかの仕事より面白そうとは思ったけど。」
なつ「私は ずっと作りたいと思ってたんです。 漫画映画を。 よし。 できた。」
(チャイム)
桃代「ちょうど お昼だ。 よかったわね 1枚できて。」
なつ「はい。 モモッチさんは?」
桃代「私は 10枚。」
なつ「すごっ…。」
桃代「このカット袋が 何百 何千とあるんだからね。」
なつ「はい…。」
桃代「でも あなたも すごいじゃない。」
なつ「えっ?」
桃代「これって やりたい仕事だったんだ。」
なつ「そですよ!」