夜ドラ「作りたい女と食べたい女」(第18回)

春日「分かります。 母がそうなんです。 同じような感じで。」

藤田「そうなんだ。」

春日「私は 離れて暮らしてますけど 母には 母の人生を生きてほしいって 思っていて。」

藤田「うん。」

春日「思ってるだけで 言えてないんですけど。」

藤田「そうなんだね。 うちの子も そんなふうに思ってくれてたりして。」

春日「お子さんが いらっしゃるんですね。」

藤田「うん 娘がね。 今 大学生。」

春日「そうですか。」

藤田「娘も大きくなったし 離婚したら せいせいするかも …なんてさ フフフ。 難しいけどね。 無責任だよね。」

春日「私も 祖母の介護が大変だから 実家に帰ってこいと 言われてるんです。 父に。 でも 私は帰りたくないと思っています。 それでも 母のことを考えると 少し…。」

藤田「帰らなくていい。 帰りたくないなら 帰らないでいい。 絶対絶対 自分の人生 大事にして。 親のために 自分を犠牲にしたりしないでね。 私なら 娘にそう言う。」

春日「そう言ってくれますかね。」

藤田「私ならね。」

春日「母のことは気がかりですが でも 帰らないつもりではいます。」

藤田「それでいいよ。」

春日「無責任なことは言えないですが 藤田さんも ご自分の人生 大切にして下さい。」

藤田「フフフフフ…。 娘に言われた気分だ。 ありがとう。」

店員「お待たせしました チキン南蛮定食で~す。」

車内

(呼び出し音)

父『お~ 十々子。 やっと帰ってくる気になったか。 話してたんだけど お前の部屋が今 物置になってるを片づければさ…。』

春日「私 帰らないから。」

父『…あ?』

春日「帰らない。 というか その家には 一生戻らない。」

父『一生って 何だよ。』

春日「私 昔からお母さんのことが不思議だった。 お父さんと おばあちゃんの言いなりで まるで家政婦みたいに 家のこと 全部やらされて。 お父さんは お母さんに全然優しくしない。 感謝もしない。」

父『俺が悪者か。 いい加減にしろよ! 相変わらず かわいくねえね。』

春日「そこにいたら 私は私でいられなくなる。 私は 家の何かじゃなくて 私でいたい。 その家には 一生戻らない。」

父『お前 家族を見捨てるのか!』

春日「もう連絡してこないで下さい。」

父『おい! 待て! 親不幸者! おい!』

(電話を切る音)

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