純喫茶・アイドル
春子「ミレニアムレコードの 制作本部長さんなんですね 今は。」
柏木「フフフッ。」
春子「ご立派になられて。」
水口「チーフマネージャーの水口と申します。」
柏木「まだ この業界にいたんだね。」
春子「ええ。」
(笑い声)
柏木「…で どういった ご用件で?」
春子「私じゃなくて 娘なんです。」
柏木「…娘?」
春子「アイドルになりたくて 岩手から上京してきたんですよ。」
柏木「歌唱力は?」
春子「そんなの 別の人に歌わせちゃえば いいのよ!」
柏木「アハハハッ 冗談きついな…。」
<スリーJの女社長 天野春子が ついに動き出しました>
春子「ここだけの話ですけど 柏木さんが気に入ってくれて ミレニアムから CDデビューが決まったんですよ。」
<嘘に嘘を塗り重ねて ママは交渉を続けました>
春子「困ったわ…。 馬場さんのところで 女優デビューする事が決まってるの。」
桂「ああ じゃあ 残念だけど…。」
春子「レギュラーだったら 向こう蹴りますけど。」
桂「レギュラーって… ちょっと 春ちゃん。」
春子「よろしくお願いします。」
水口「お願いします。」
アキ「お願いします。」
春子「私が果たせなかった夢を 娘に かなえてほしいんです…。(すすり泣き)」
<それは まるで アイドルになれなかった かつての少女 天野春子による 復讐劇を見てるようでした>
スリーJプロダクション
<そして ついに…>
春子「ざっと こんなもんよ。」
水口「すげえ…。」
春子「まあ 演技は素人だって 言ってあるしさ 最初は セリフも あったり なかったりだけどさ。」
黒川「ああ! これ パパの大好きな番組 温泉回るやつ!」
春子「よ~し 忙しくなるよ!」
アキ「やりだぐねえ。」
春子「え?」
アキ「ママ ごめん。 でも おら 今は 何にもやりだぐねえ。」
春子「ちょっと あんた 何 言ってんの? この仕事もらうために ママが どんなに苦労したか 分かってんの?」
アキ「インチキじゃん! これ 全部 ママのコネでしょ? おら 何にもしてねえ。 こんなんで 何の努力もしねえで ドラマだの バラエティーだの出たら 天狗になっちまう。
水口「あのね 世の中には テレビに出たくても出れない人が ごまんといるんだよ。」
春子「聞こう 聞こう アキの言い分。 最後まで聞いてみよう。」
アキ「だから 気持ちは うれしいけど おら… ズルしてまで仕事欲しくねえ。」
春子「ズルじゃないわよ!」
アキ「うわ~!」