無頼鮨
種市「こちら どうぞ。」
大吉「タイトすぎるべ。!」
アキ「ホントだよ! 修学旅行じゃあるめえし。」
黒川「このあと 予定では 秋葉原で 買い物になってますけど。」
安部「明日にしましょう。 いや 明日は休みましょう。」
夏「だらしねえなあ! んだら 明日は おらとアキで別行動だ。」
アキ「別行動?」
夏「実は…。 会いでえ男がいるのさ。」
一同「じぇじぇじぇ!」
夏「やがましい! 誰にも言うなよ。 特に春子にはな。 何があっても バレてはなんねえぞ。 いいな? いいな。」
大吉「おら 約束できねえ!」
黒川「大吉さん!」
大吉「黙ってる自信がねえ! だから 聞かねえ!」
黒川「じゃあ 僕も!
夏「まあいい。 結婚して 春子が生まれて 44年か? おら 北三陸から 一度も離れた事なかった。 夏は海女として 海さ潜り ただ ひたすら 夫の帰りを待つ 漁師の嫁だった。」
黒川「その反動で 春子さんは 派手好きな娘になったんですね。」
アキ「聞こえてんじゃねえか。」
大吉「正宗さん!」
夏「そんあ 天野 夏ですが 66年の人生の中で 一回だけ 道ならぬ 恋に 溺れた事がある。」
大吉「じぇ~ じぇ~ じぇ~ じぇ~!」
アキ「うるせえ! 誰? その人 東京の人?」
夏「ヘヘッ 名字は言えねえ。 下の名前は… ゆぎお!」
スナック・梨明日
一同「ゆぎお?」
かつ枝「んだ。 ゆぎおっつう男と 昔 何やら あったそんだ。」
菅原「うん? ゆぎお ゆぎお…。」
長内「鳩山か?」
菅原「いや…。」
今野「あるいは ほれ 青島か?」
吉田「どっちにしろ なかなの大物ですよ。」
弥生「あっ! そういえば おらも聞いた事ある。 夏ばっぱが酔っ払ってよ『ここだけの話だ』って 前置きしてよ。」
一同「うん。」
(琥珀を落とす音)
吉田「うわっ 何!? 何だよ 勉! 勉アフレック!」
勉「いや… 何でもねえです。」
長内「びっくりさせんなよ!」
吉田「勉! 小田 勉 和田 勉と 1字違い!」
回想
1964年(昭和39年)
(拍手)
司会者「いや~ インド人も びっくりだね! それでは 漁協組合婦人部を代表して そ… 袖がめ…。 袖が浜の 天野 夏さんから 花束の贈呈です。 どうぞ!」
(拍手)
夏「ようこそ 北三陸へ!」
橋「どうも ありがとう。」
(拍手)
回想終了
無頼鮨
2人「橋 幸夫!?」
安部「夏ばっぱの会いたい男って まさか…!」
大吉「は… 橋 幸夫なのか!?」
夏「んだ! 橋 幸夫さ!」
大吉 安部「じぇじぇじぇ~!」
アキ「誰? 誰?」
夏「昭和39年の春 北三陸の体育館で 橋 幸夫のリサイタルがあってよ。」