花子「皆さん どうぞ。」
ふじ「どうぞ。」
平祐「ああ こりゃ どうも どうも。」
ふじ「どうぞ。」
英治「どうも。」
花子「歩ちゃん。 ここは 海よ。 想像の翼を大きく広げて ここが海だって想像してみるの。」
歩「ここが海?」
花子「そう。 さあ 目を閉じて。 想像してみて。 歩ちゃんは 今 みんなと一緒に浜辺にいます。 今日は とっても いいお天気で 太陽は キラキラしています。 みんなも一緒に 想像の翼を広げて。」
花子「ザブ~ン ザブ~ンと寄せては返す波。 あっ 大きな波が来たわ!」
歩「でも ここは おうちだもん…。」
吉平「ほうじゃねえ 歩…。 おおっ! 海だ! さあ おじぃやんと泳ごう!」
花子「おじぃやんが泳ぐよ!」
吉平「すい~ すい~ すい~。」
英治「よし! じゃあ お父ちゃまも泳ごうかな! ザッブ~ン!」
2人「すい~ すい~。」
吉平「ほら 歩も 泳がないと溺れるぞ! おいで! あっ! でっけえ魚がいるじゃん!」
英治「あっ!」
吉平「うわ~!」
2人「すい~。」
歩「でも ここは海じゃないもん…。」
花子「歩ちゃん。」
歩「僕 海に行きたい。 海に行きたいの!」
花子「歩!」
平祐「まあ 畳を海だと思えという方が 無理があるな。 ハハハハ。」
書斎
花子「歩ちゃん おばぁやんがスイカ切ってくれたよ。 これ食べて 機嫌直そうよ。 歩ちゃん。」
歩「僕 海でスイカ食べる!」
花子「歩…。 いつまでも わがまま言ってる子は 知りませんからね!」
<花子が息子に手を焼いている頃…。>
宮本家
<一方 蓮子は…。 おや? こちらは 順調なようですね。」
純平「お母様 ただいま。」
蓮子「お帰りなさい。 棚に おやつが入ってますよ。」
純平「うん。」
浪子「純平。 手は洗ったのかい?」
純平「まだです。」
浪子「お外から帰ったら きちんと きれいに手を洗いなさいって 言ってるでしょう。 蓮子さんも 仕事にかまけてないで ちゃんと注意しなさい。」
蓮子「申し訳ございません。 気を付けます お義母様。」
浪子「ほら 早く洗いなさい。 きれいに洗うんだよ。」
純平「はい。」
浪子「それにしても 富士子は いい子だね。 生まれた時から たくさん お乳は飲むし よ~く育つよ。」
蓮子「ええ。」
浪子「はい。」
純平「ねえ おばあ様。 僕が生まれた時は どんなだった?」
浪子「えっ…。」
純平「ねえねえ 教えてよ~。」
蓮子「おばあ様は 純平が生まれた時の事 知らないのよ。」
浪子「ちょっと 蓮子さん。」
純平「どうして?」
蓮子「それは…。」
<龍一と引き離され 実家に連れ戻された蓮子は 一人で純平を産みました。 それを 幼い息子に どう説明したらよいのか 蓮子は 言葉が見つかりませんでした。>