村岡家
書斎
花子「歩ちゃん。 みんなと一緒に お弁当食べましょう。」
歩「雨なんか嫌いだ! ずっと降らなきゃいいんだ!」
花子「『今日のように ある暑い夏うの朝の事です』。 『小さな ひとひらの雲が 海から浮き上がって 青い空の方へ 元気よく 楽しそうに飛んでいきました。 ずっと下の方には 下界の人間が 汗を流しながら 真っ黒になって 働いておりました。 雲は 思いました。」
花子「『どうかして あの人たちを助ける工夫は ないのだろうか』』。 『こちらは 空の下の世界です。 あんまり太陽の光線が強いので 人々は 時々 空を見上げては 雲に向かって 『ああ… あの雲が 私たちを 助けてくれたらな』というような 様子を致しておりました』。 さあ 雲は 何て言ったと思う?」
歩「『助けてあげるよ』って。」
花子「そうね。 でも 雲は 人間の世界に近づくと 消えてしまうの。」
歩「消えちゃうの?」
花子「それでも 雲は 勇ましく こう言ったの。 『『下界の人たちよ。 私は 自分の体に どんな事が起きても構わない。 あなたたちを助けよう。 私は 自分の命を あなたたちにあげます』。 下へ下へ 人間の世界に下っていった雲は とうとう 涼しい うれしい 夕立の滴となって 自分の体をなくしました』。」
英治「ほら。」
花子「まあ…。」
歩「雲は 死んじゃったんだね。」
花子「ええ…。 でもね 雲が降らせた雨で 苦しい苦しい暑さから たくさんの人や動物や木や草花が 救われたのよ。」
歩「じゃあ 雨の事 嫌ったら かわいいそうだね。」
花子「うん そうね。 今日は 雨で海に行けなくて 残念だったけど 今度の日曜日 行こうね。」
歩「うん。」
居間
歩「僕 分かったよ。」
平祐「ん? 何だ? 歩。」
歩「雲はね 雨を降らせて消えちゃったあと 虹になるんだよ!」
花子「てっ…。 ほうね!」
歩「お別れに お空の虹になったんだ。」
吉平「ほう~…。」
ふじ「アハハ あんたの言いてえこんは 分かるさ。」
英治「歩は 神童に間違いありませんよ!」
吉平「いや~ 全くじゃん。」
(笑い声)
カフェー・タイム
ふじ「て~っ! 立派なお店じゃん かよ!」
吉平「ああ 自分の店を持つなんて 俺の娘にしちゃ出来すぎじゃん。 かよ うんとこさ頑張っただな。」
かよ「おとうも おかあも ゆっくりしてってくれちゃ。」
吉平「かよ。 もう 郁弥君の事は 大丈夫か?」
かよ「こぴっと頑張ってれば きっと郁弥さんが見ててくれる。 ほう思ってるさ。」