須藤「では 安東さん。」
はな「はい。」
(拍手)
はな「『みみずの女王』は 私が尋常小学校で受け持っている たえさんという生徒と 一緒に作った物語です。 その子は もう 遠くに引っ越してしまったので お話の続きを読んでもらいたいと 思い 応募しました。 そしたら 運よく この賞を頂けました。 ですから 半分は たえさんがもらった賞です。 この受賞は 一回きりのいい思い出として 甲府に帰って 真面目に 教師を続けたいと思います。 ありがとうございました。」
(拍手)
醍醐「本当に これ一回きりでいいの?」
はな「最初で最後だから 花子という名前で 載りたかったな…。」
醍醐「それ 入稿する時 私が本名に直したの。」
はな「えっ?」
醍醐「やっぱり 安東はなの方が はなさんらしいし 修和女学校の先生方や同級生も 気が付いてくれると思って…。」
はな「てっ… 醍醐さん 気が利き過ぎです!」
醍醐「ごめんなさい。」
はな「私 あの人に ひどい事 言っちまった…。」
醍醐「えっ?」
はな「梶原さん!」
梶原「ん?」
はな「村岡さんは?」
梶原「さっき帰ったよ。」
はな「村岡さん! 村岡さん! 村岡さん! 村岡さん…。」
はな「どうしよう…。」
英治「あれ? まだ いらっしゃったんですか。」
はな「てっ 村岡さん…。」
英治「どうも。」
はな「ごめんなさい! 私の早とちりで 誤植じゃなかったんです これ! 友達の醍醐さんが はなに変えてたんです。」
英治「ああ… そうでしたか。」
はな「本当にごめんなさい!」
英治「ああ いえ。 一つ 聞いてもいいですか? 花子という名前に どうして そこまで こだわってたんですか?」
はな「私 子どもの頃から 花子と呼ばれたかったんです。 『はなじゃねえ。 おらの事は 花子と呼んでくりょう』って 二言目には そう言い返す子でもでした。」