連続テレビ小説「花子とアン」第60回「乙女よ、大志を抱け!」【第10週】

リン「やだよ~。 ここんちは お通夜みてえじゃん。」

ふじ「リンさん おいでんなって。」

リン「はなちゃん 東京行っただとう?」

ふじ「うん。 自分の書えたもんが 本になるかどうか 見てもらいに行っただよ。」

リン「本当に小説家になる気ずらか。 困ったねえ…。」

周造「何で おまんが困るでえ?」

リン「うちの朝市だけんど 縁談があっても 断ってばっかしだから おかしいと思って おら こぴっと考えただ。 『ひょっとしたら 心に決めた人がいるずらか』って。 『ほりゃあ はなちゃんじゃねえか』って!」

ふじ「リンさん おかあのくせに 今っ更 気が付いただけ。」

周造「そうさな。」

リン「てっ! やっぱし ほうけ! 何で 2人とも 言ってくれなんだでえ! やっぱし ほうけ!」

かよ宅

はな「勢いで 出版社に持ち込んでみたけんど 宇田川満代さんに会って 圧倒された。 小説一本でやってく人は やっぱり違うさ。」

かよ「本当に小説家になりてえなら 何だって できるはずじゃん。 お姉やんが本当に本気なら。」

はな「かよの言うとおりかもしれねえ。 本当は 自信がないの。 うん。 かよは 何でも自分で決めて いっつも前に進んで偉いじゃんね。」

かよ「おやすみ!」

はな「おやすみ。」

向学館

醍醐「編集長 いらっしゃいました。」

梶原「その辺に座ってて。」

はな「はあ…。」

梶原「『君は 小説家になるには 普通すぎる』と言ったよね。」

はな「はい。 諦めた方がいいと言われました。」

梶原「君の新作は ひどく普通だ。」

はな「平凡すぎる私が 本を出したいなんて やっぱり無理ですよね。 分かりました。 諦めます。 お時間とらせて 申し訳ありませんでした。」

醍醐「はなさん…。」

梶原「安東君。」

はな「あっ あっ 大丈夫です! 慰めとか そういうのは 一切いりませんから。 これで こぴっと諦めがつきました。 ありがとうございました! ごきげんよう。 さようなら。」

梶原「話は 最後まで聞きたまえ。 この作品は 何気ない ありふれた日常を切り取ってる。 ささやかな暮らしの断片に 光を当て 奇をてらったところが 少しもない。 そこが 実にいい。」

はな「てっ…。」

梶原「君は 平凡さを逆手に取って すばらしい作品を書き上げた。 洗練された平凡。 それは 直ちに非凡さに通じるものだ。 是非 出版させてくれ。」

はな「本にして頂けるんですか?」

梶原「よろしく。」

醍醐「おめでとう はなさん! …じゃなかった。 安東花子先生 おめでとう!」

<はなは ふわふわ どこかへ 飛んでいきそうな気分でした。 ついに 花子の名前で 本が出版されるのです。>

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