醍醐「はい。 ああ もう… はなさん お茶 お願いするわ!」
はな「お茶… はい。」
英治「こういう感じは どうかと思いまして。」
梶原「ちょっとな… ほかのページと違い過ぎるな。」
英治「だからこそ 目を引いていいと思うんですよ。」
梶原「どう?」
三田「違い過ぎますね。」
英治「どうも。」
はな「いいえ。」
梶原「安東君 これ どう思う? 君が翻訳してくれたページの 新しい割り付け案だ。」
はな「物語の世界に合っていて すてきだと思います。」
梶原「そう…。 村岡君が新たに考えてくれたんだ。」
英治「この方が 読者に より物語が伝わると思いまして。」
梶原「そうかな…。」
英治「あの… 翻訳物の連載は まだ どこもやっていませんし せっかく 新しい児童雑誌を 作るんだったら これぐらい 遊び心があった方が いいと思うんです。」
醍醐「編集長。 絶対に この方がいいと思います! 上品で洗練されていて まるで 村岡さんみたい…。」
三田「醍醐君の感想は 私情が入り過ぎてます。」
醍醐「そうかしら。」
梶原「分かった。 この割り付けで 一度 組み版してみて。」
英治「はい。 すぐに。」
醍醐「村岡さん ほかの割り付けも 少し変更したいんですけど。」
英治「ええ。」
廊下
はな「あっ 村岡印刷さん!」
英治「はい… 僕 また 何か忘れ物しましたか?」
はな「いえ。 お礼が言いたくて。 あの… すてきな割り付け 考えて下さって ありがとうございました。」
英治「いえ…。」
はな「では よろしくお願いします。」
英治「花子さん。」
はな「はい。」
英治「続き 楽しみにしてます。 あなたの翻訳する言葉は 本当に素直で美しい。 そのよさが 読者にも伝わるような 誌面にしますから。」
はな「どうして 急に そんな優しい事 言うんですか? いつもみたいに 『バカでも分かる』でいいのに…。 そんな事 言われたら また 勘違いしちゃうじゃないですか。 これでも こぴっと頑張ってるんです。 あなたを忘れなきゃって…。 もう 優しくしないで下さい。」
英治「すみません…。」
カフェー・ドミンゴ
宇田川「どういうつもりかしら? この間 私を振り切るようにして 帰ってから 謝罪の言葉もないなんて。」
はな「申し訳ありません!」
宇田川「私 面白い恋愛の題材を ずっと待ってるんだけど。」
♬~(レコード)
はな「あの… 友達の話なんですけど…。」
宇田川「つまらなそうだけど聞くわ。」
はな「友達が ある男性と再会して… ひょんな事から その人の事を 好きだと気付いてしまって 思わず 思いを告げてしまったんです。 とっさに後悔して 彼の前から 立ち去ったんですけど なぜか 彼は どしゃ降りの雨の中 追いかけてきて… そして 傘を差し出してくれて…。」
宇田川「それで?」
はな「抱き締めて…。」
宇田川「それで?」
はな「あっ あくまで 友達の話です!」
宇田川「それで?」
はな「翌日 彼は こう言ったんです。 『ゆうべの事は 忘れて下さい』と…。」
かよ「お姉やん…。」