郁弥「『てっ!』? かよさんだ! 父さん ずるいですよ! 僕だって 行きたいのを我慢して ここで働いてるのに。」
平祐「じゃあ 始めようか。」
2人「はい。」
平祐「郁弥の挨拶回りは 済んだのか?」
郁弥「はい。 兄さんの打ち合わせにも 同行させてもらってます。」
平祐「梶原君の立ち上げた聡文堂の 新しい雑誌は どうなってる?」
英治「目玉となる作家先生の 原稿の めどが立っていないようで 校了までには まだ しばらくかかるかと。 それで よりよい割り付けを 思いついたページがあるので 今日 その提案に行ってきます。」
郁弥「へえ~。 兄さんが 割り付けするなんて 珍しいね。」
英治「そんな事ないさ。」
平祐「引き続き しっかり頼む。」
2人「はい。」
平祐「英治。 昨日 また 香澄さんの見舞いに 行ったそうだな。」
英治「はい。」
平祐「向こうの父上から連絡があった。 『こんなに頻繁に 病院に 来てもらっては 申し訳ない。 いつ治るか 分からないのだから 英治君のためにも 離縁を考えてほしい』と 言っていた。 あちらも そう言ってる事だし お前も そろそろ…。」
平祐「父さん。」
郁弥「病気の義姉さんを見捨てろと 言うんですか?」
平祐「英治。 お前は まだ若い。 健康な人と一緒になって 子どもを育てる そういう家庭を持つ事だって できるはずだ。 お前のためにも この会社のためにも 考えてみなさい。」
英治「そんな事 考えられません。」
英治「郁弥。」
郁弥「ん?」
英治「これ 聡文堂に届けてくれないか?」
郁弥「何で 兄さんが行かないの? 今 手ぇ離せないよ。」
英治「分かった…。」
聡文堂
廊下
醍醐「まあ 英治さん ごきげんよう。」
英治「どうも。」
醍醐「どうぞ。」
職務室
醍醐「昨日は いらっしゃらなかったから どうされたのかと思いました。」
英治「ああ…。」
梶原「英治君。」
英治「どうも。」
(電話の呼び鈴)
醍醐「お茶は 私が!」
はな「あ… お願いします。」
須藤「醍醐君。 岡田先生から電話。」