聡文堂
執務室
はな「いかがでしょうか?」
醍醐「どれも 物語の世界に合っていて すてきだと思うんですけど…。」
宇田川「これは 銀河の乙女ではないわ。 あとの絵はいいけど この絵は 描き直してちょうだい。」
英治「分かりました。」
はな「お願いします。」
英治「あの… 先生の思い描く 銀河の乙女を教えて頂けますか?」
宇田川「ここに書いてあるでしょ?」
英治「はあ…。」
はな「先生 せめて その絵の どの辺が違うのか…。」
宇田川「とにかく 何か違うのよ。」
英治「分かりました。 もう一度 読み直して描いてみます。」
宇田川「よろしく。」
醍醐「ああいう抽象的な感想が 一番 やっかいなのよね…。」
カフェー・ドミンゴ
(ドアが開く音)
かよ「いらっしゃいませ。 てっ… また来ただけ。」
武「また来てやったさ。 喜べし。」
朝市「やっぱり このお店の方が落ち着くじゃん。 ほかのカフェー 女給さんたちが あんまりにも積極的で。」
かよ「田舎もんには 刺激が強すぎたけ?」
武「う~ん 女給は 美人だったけんど こことは比べもんにならんくれえ 高かったさ。 ほういうもんけ?」
<どうやら しっかり ぼられたみたいです。>
かよ「そちらへ どうぞ。 コーヒーでいいけ?」
朝市「うん。 ありがとう。」
かよ「はい。」
はな「『銀河の乙女』の挿絵 どうでしょうか? 『銀河の乙女』を もう一度 読み返してみたんです。」
英治「はい。」
はな「これを見て下さい。」
英治「これは…。」
はな「ルカは 乙女座のスピカへ向かう 長い長い旅の途中で いろいろな敵に出会います。」
英治「アークトゥルスの巨人 プロキオンの悪魔…。」
はな「敵と戦うルカの姿に 何か 手がかりが あるのではないでしょうか? 参考になればよいのですが…。」
英治「すごく助かります。」
はな「という事で 次の締め切りなんですが…。」
英治「ああ ええ。」
村岡印刷
郁弥「それ… 安東さんが作った資料?」
英治「うん。 引き受けた以上 いい本にしないとな。」
郁弥「兄さん。 正直言って 僕は 彼女はやめてほしい。」
英治「何の話だ?」
郁弥「父さんが言うように 兄さんが再婚する事には 僕も賛成だ。 でも 安東さんは やめてほしい。 だって それじゃ… 義姉さんが あんまりにも かわいそうで…。」