嘉納邸
<それから 数日がたち…。>
蓮子の部屋
(ノック)
すず「奥様。 すずです。」
蓮子「あの方から お手紙が届いたの?」
すず「いえ。 お手紙ではなく…。」
龍一「久しぶりですね。」
蓮子「どうぞ。」
蓮子「私の事なんか とっくに お忘れになったと 思っていました。」
龍一「残念ながら 忘れる事がきなくて…。 手紙 拝読しました。 暇潰しに 僕をからかって 遊んでるんですか? それとも…。」
蓮子「そんな事を聞きに わざわざ いらしたの?」
龍一「違う! あなたを…!」
(足音)
廊下
タミ「何ばしようと?」
すず「あ… 何も…。」
♬~(レコード)
蓮子の部屋
蓮子「私を… 何ですの?」
龍一「今日 ここに来たのは あなたを連れ出すためです。 あなたの本当の気持ちを 教えてほしい。」
蓮子「その手紙のとおりです。 あなたのそばで生きられるなら 私は 全てを捨てます。」
龍一「それが どういう事か 分かってますか!?」
蓮子「分かっています! 宝石も着物も要らない! 家も名前も捨てます! あなたのそばで生きられるなら。 だから… 今すぐ 私を ここから連れ出して!」
龍一「あなたを試すような事を言って… すみませんでした。 逃げましょう。 そして 2人で暮らしましょう。 けれど 今すぐにという訳には いきません。」
蓮子「どうして…。」
龍一「今 逃げたところで すぐに見つかって 引き裂かれるのが 落ちだ。 あなたは この家に連れ戻され 僕は 牢屋に入れられる。 そうならないためにも 準備が必要だ。 僕たちは… 必ず一緒になれる。 だから もう少しだけ 我慢して下さい。」
蓮子「…分かったわ。」
村岡家
玄関前
花子「蓮様!」
居間
蓮子「はなちゃん すごくきれい。 やっぱり 村岡さんは はなちゃんの 巡り会うべき たった一人の人だったのね。」
嘉納「ほう…。」
蓮子「それにしても 大きなおなか。 もう 今にも生まれそうね。」
花子「私… 怖いの。 無事に産めるのか ちゃんと育てられるのかって…。」
蓮子「大丈夫よ はなちゃんなら。 小さい妹さんたちの子守りも こぴっとしてたんでしょ?」
花子「ええ…。」
蓮子「でも… 産む時は 覚悟した方がいいわよ。 ものすごく痛いから。」
花子「てっ…。」
蓮子「フフフ! そんなに怖がらないで。 『案ずるより産むが易し』よ。」
嘉納「よし。 安産祈願をしちゃる。」
花子「てっ…? てっ!?」
嘉納「俺の安産祈願は 評判ばい。 や~っ!」
花子「てっ! てっ…。」