サザンアイランド
善行「(くしゃみ)ハハハ 誰かおじさんの話題話してる いかがですか? 沖縄ちゅら玉 綺麗でしょ ちょっと待って これ見て サンゴTシャツ サンゴやから35って書いてある ダサカッコ良さがウケるみたいなね 今の若い人たちににはね 要りませんか そうですか こっちね ちんすこうございます 銘菓ちんすこうね」
善行「かつこさん きちんとお掃除やってよ お願いしますね どうもありがとうございました」
善行「何をボーっとしてんのや お前がボーっとしてるから 売れへんやったやないか」
晴海「すみません 今頃 純は 最終面接かと 思うと つい…」
正「まあ あいつのことだから 面接官に 怒鳴ってたりして」
善行「あいつの話しは二度とするなと言うたやないか 就職全部落ちても このホテルでは呼ぶな 島袋さん 綺麗にやってね お掃除」
純「ウチの家族3人で 近所の人に手伝ってもらいながら 小さなホテルをやってます あと アホな弟が1人いました 二浪のくせに勉強もしてない」
中津留「あなたのエントリーシート見たけど ずいぶん個性的ですね」
純「そうでしょうか?」
中鶴「では あらためて 当社を希望する理由を教えて下さい」
純「はい 社長になりたいからです」
真一郎「社長になって どうするの?」
純「おじぃが作った… あっ… 祖父が作ったようなホテルにしたいんです ここを」
真一郎「それは どんなふうに」
純「魔法の国です」
面接官「魔法の国?」
純「そこに泊まった お客さんは みんな笑顔になって帰るんです まるで 魔法がかかったみたいに」
真一郎「なんでだろ?」
純「まだ よく分かんないんですけど 一つだけ 言えるのは そのホテルには おじぃの愛がたくさん 溢れてるっていうことで」
純「おばぁを心から愛してたおじぃは おばぁが不治の病にかかったと知ったとき 経営してた 車の修理工場壊して ホテルを作る決心をしたんです 仕事が忙しくて ロクに旅行もつれていけなかった おばぁのために 泊まっただけで 世界一周したような気分になる そんなホテルを作ってやるんだって でも 結局 おばぁは そのホテルを見ることはできませんでした」
露木「(くしゃみ)すみません」
真一郎「ごめんね 続けて」
純「はい おじぃのホテルは」
(携帯の着信音)
米田「すみません どうぞ 気にしないで」
落ち着け 純
純「おじぃのホテルは」
冷静に 冷静に
純「こんなことは 言いたくないんですけど」
あー ダメ ダメ 純! ダメ!
純「どうして 携帯とか 切っとかないんですか? さっき 彼女が あなたの携帯が鳴ったせいで 調子が狂って 結局 言いたい事の半分も言えなかったの 分かってます?」
露木「まあまあ」
純「てか あなたの くしゃみもそうですよ もう少し 気を使って せめて 小さくやるとか 出来ないんですか? あなたみたいに でっかい声で くしゃみをする人って 周りの人間がどれだけ ビックリして どれだけ心臓が縮む思いしてるか 分かってます?」
中津留「もう それくらいで 時間もないし」
純「時間がないと仰るなら 言わせてもらいますけど この面接は私達の一生がかかってんですよ だったら あなたも こっちが話してる時は 書類なんか見てないで 人の顔も見ましょうよ」
純「もう二度と会えないかもしれないんだから せめて 今この瞬間を 共に良い時間にしましょうよ 考えたら それってホテルの基本理念じゃないんですか? それくらいの気配りも出来なくて よくホテルで働いてますね 偉い人がこんなんだったら 近い内に潰れますよ このホテル」