ブライダルサロン
純「いらっしゃいませ」
橋本「あの 先週 式の予約をした 橋本です」
純「ああ どうぞ」
橋本 大久保「…」
純「どうなさったんですか?」
橋本「あの… 式をキャンセルしたんです」
純「え?」
池内「どういった ご事情でしょうか?」
橋本「実は ウチの父が経営してた会社が倒産して 莫大な借金が残ったので 自殺をはかりまして」
純 池内「え」
橋本「幸い命に別状はなかったんですけど 彼女のご両親が 娘の将来が心配だ って僕たちの結婚に反対しだして そしたら ウチの親も結婚 やめろって… 彼女が耳が聞こえないので 元々反対だったこともあって」
純「じゃあ 結婚もやめちゃうんですか?」
橋本「いえ 僕は彼女と一生別れる気はありません」
橋本(手話)『ずっと一緒だよ」
橋本「彼女も どんなことがあっても 僕と離れないって 言ってくれてます」
純「そうですか」
橋本「ただ 経済的にも大変だし 親同士が絶縁状態なったんで 役所に婚姻届けを出すだけにすることにしまして」
池内「分かりました 残念では ありますが こちらの 解約合意書に ご署名お願いできますか」
おじぃ なんか悲しいよ こんなの 本当は結婚式挙げたいんだろうな
純「ああ! ちょっと すみません あの せっかくなんで どうでしょう? 写真撮影だけでも? いかがですか?」
純「ほら ここに ほら 新婦さんが 昔 お母さんが着たウエディングドレスで結婚するのが夢 って書いてあるし」
橋本(手話)『写真だけでも撮る? お義母さんのドレス着るの夢でしょ』
料飲部
池内「かなり迷っていらっしゃいましたが 明日ウエディングドレス持ってきていただいて ウチのスタジオで撮影することになりました」
露木「そうか キャンセルは痛いけど 仕方ないな」
露木「なんやねんお前はさっきから うろうろ 鬱陶しい!」
純「あの… やっぱり 写真撮影だけじゃなくて 式も挙げるわけには 行かないでしょうか?」
露木「何言うとるんや? お客様は もうキャンセルしたんやろが?」
純「でも こんな辛い状況なのに お2人がお互い信じあってる姿を見たら なんか なんとか祝福して あげたいな って思ったんですよ」
池内「コスト 人間は どうするの? ホテルはボランティアじゃないのよ」
純「だから そこをなんとか できませんか?」
露木「なんとかって お前 どんな最上級な魔法使うつもりや? それやのうても こっちは 忙しいんや! オオサキ60周年のイベント企画考えな いかんし それに(くしゃみ)変な噂もあるしな」
純「なんですか 変な噂って?」
ロビー
結局 そんなことも知らないのか って教えてもらえなかった あ! あの人なら 知ってるかも? 変な噂って なにか
ああ… でも この前あんなこと あったしな… ああ いかん いかん 普段通り 普段通り
純「お疲れ様です」
か 顔も見てくれない…
純「あの 水野さん ウチの部長が言ってたんですけど なんか 変な噂があるんですか 今?」
水野「気使って話しかけなくて いいよ 俺なんかに」
千香「あの水野さん 今日 よかったら ランチ 一緒に」
水野「悪いけど 先約あるから」
あ… きっと 私のせいだと思ってるんだろうな
純「あの 社長 1つ聞いて いいですか?」
真一郎「うん?」
純「あの なんか みんな落ち着きないんですけど なんかあったんですか?」
真一郎「知らないの?」
純「はい?」
真一郎「ウチのホテルが 外資系ホテルに 吸収合併する っていう記事が出たんだよ 経済新聞に」
純「え?」
真一郎「でも 安心して オオサキの文化とか 名前は残る 対等合併だし まあ 基本的には 今までとなにも変わらないから」
純「本当ですか?」
真一郎「悪いね 社長にまで 心配かけて」
純「いやいやいや あの でも ウチのホテルそんなに経営苦しかったんですか?」
真一郎「いや まあ こんなご時世だし リーマンショック以来 融資してくれてたメインバンクが やたら 返済をせまるようになってさ」
純「はあ そうなんですか…」
真一郎「じゃ」
だから このごろ 体全体から 哀愁を漂わせてたのね