小原家
居間
♬~(善作の謡)
糸子「ただいま!」
千代「…お帰り。」
♬~(善作の謡)
糸子「謡か。 ふん あんなもん習うて 何が おもろいねん。 ほんま 世の中 暇人 多いなあ。 あ~。」
千代「勘助ちゃん どないやった?」
糸子「あのボケ さっさと お菓子屋に あんじょう 納まっちゃったわ。」
千代「お菓子屋?」
糸子「心配して 損した。 アホらし アホらし。」
千代「何を クサクサしてんの?」
糸子「何もない。 腹立つだけや!」
ハル「腹立ってるとこ 悪いけどな。」
糸子「え?」
ハル「起きてもらおか。」
糸子「何や?」
ハル「おばあちゃんは 何も 話 聞いてへんで。」
糸子「話? 話て?」
ハル「とぼけんな! あんな いけすかん女 うちに泊めるやなんぞ おばあちゃんは 嫌やさかいな。」
糸子「何の話よ?」
千代「ああ… そや 糸子。」
糸子「ん?」
千代「お父ちゃんがな『帰ってきたら 上に来い』て。 挨拶しに。」
糸子「挨拶? 謡のお弟子さんに 何で うちが 挨拶?」
千代「ただのお弟子さん ちゃうやん。 あんたのミシンの先生や。」
糸子「え? ミシンの先生て… 根岸先生?!」
座敷
根岸♬『袖さすは』
善作♬『天つ乙女の』
根岸♬『天つ乙女の』
善作♬『衣笠』