糸子「♬『春よ来い 早く来い』」
4人♬『あるきはじめた みいちゃんが 赤い鼻緒の じょじょはいて おんもへ出たいと 待っている』
<うちが初めて作った アッパッパは ちょっと おかしなとこも あったけど…>
ハル「あら 夏に涼しいで。」
千代「動きやすそうですわ。」
<うちの人らは褒めてくれました。 しまいには お父ちゃんが…>
善作「こら 将来 有望やなあ。 おい 糸子! これからな うっとこの着物 全部 お前が縫うてくれ!」
<そう言うたもんやから うちは ますます 裁縫が好きになって…>
尋常小学校
校庭
勘助「なあ お前も来いて。 ごっつ おもろいとこ あんやて。」
糸子「嫌や! うちは はよ 家 帰って 裁縫すんねん!」
<毎日 針と糸で 好きなもんばっかり 作るようになりました>
勘助「裁縫なんか 何が おもろいねん?」
松坂家
リビング
貞子「糸子から 何や 送ってきた。」
清三郎「なに 糸子から? ほう!」
勇「えっ これ 僕に?」
貞子「うん そう書いてあるわ。『夏になったら 着て下さい』って。」
清三郎「ほんで わしのこれは 何や? ああ そうか。 シャツかいな。」
貞子「『おじいちゃんには ステテコです』って。」
清三郎「ステテコ? あ~ そうか。 こうかいな? アハハハハッ!」
小原家
寝室
糸子「あんた あれ 着れへんけ?」
静子「恥ずかしいさかい。 洋服なんか 着てる人 いてへんし。」
<けど うちが ほんまもんの洋服を 作れるようになんのは まだまだ ず~っと先の事です>
昭和2年(1927)
(鳥の鳴き声)
静子「姉ちゃん! 糸子姉ちゃん! 糸子姉ちゃん!」
糸子「堪忍… あと5分。」
静子「そやけど もう8時やで。」
糸子「ああ 分かってるよ 8時やろ…。 えっ? 8時?! 何で もっと はよ 起こさへんねんな。」
静子「起こしたやん。」
居間
清子 光子♬『ちゃつぼに おわれて トッピンシャン ぬけたら ドンドコショ たわらの ねずみが 米くって チュー』
静子「お待たせ! 行こか。」
2人「うん。」
ハル「糸子 起きたか?」
(足音)
ハル「あっ 起きてんな。 ほな 行ちょいで!」
3人「行ってきま~す!」