糸子「やってみる!」
美代「うんうん。」
糸子「なあ おばちゃん これ 手本に借りて ええ?」
美代「うん ええよ。 はい!」
「かいらしいなあ。」
「かわいい!」
「なんとかして 着られへんやろか?」
「無理 無理。 あんた もう!」
小原家
小原呉服店
「そら ものは 断然 こっちが ええけどなあ。」
善作「そうですやろ? うちかて 奥さんぐらい 目ぇの利く人やないと こんな 一級品 お出ししませんねんで。」
「けど 値段も一級やんか!」
善作「あ~ イタタタッ 痛いなあ。 そこは それ 勉強させてもらいますがな。」
糸子「ただいま! お父ちゃん 余ってるきれ 頂戴!」
善作「ああ? お母ちゃんに聞き。」
糸子「分かった。」
善作「ああ これこれ お客さんに『こんにちは』言わんかい。」
糸子「こんちは!」
善作「ああ…。」
「こんにちは!」
糸子「お母ちゃん!」
台所
千代「うん?」
糸子「お母ちゃん 余ってるきれ 頂戴。」
千代「余ってるきれ?」
居間
糸子「うわ~! うわっ おばあちゃん これ きれい! あっ これも きれい! あっ これも きれい!」
ハル「きれいでも それは あかん。」
糸子「何で?」
ハル「木綿と違うさかい 肌に合わへん。 じかに着るもんちゃう。」
糸子「ふ~ん…。」
ハル「きれもな 肌に近い方が ええのん。 遠い方が ええのん。 いろいろ あんやし。」
糸子「ふ~ん…。」
ハル「さあ 貸し。」
<うちは 初めて きれの事を おもろいと思いました>
子供部屋
<おばあちゃんは 晒っちゅう きれを うちにくれました。 晒は 古すぎて ちょっと黄色なってるけど かめへん かめへん!>
糸子「ああ…。」
千代「糸子…。 御飯 食べるか? また 明日にし。 な!」
糸子「でけた! うち… 洋服 縫えた!」
居間
善作「おい はよせえよ!」
糸子「待って 待って… よっしゃ ええで!」
2人「せ~の!」
善作「よっ 糸子!」
千代「あらまあ!」