周防「おいは…。」
糸子「『おいは』って 自分の事ですか?」
周防「そうです。」
糸子「はあ…。」
周防「おいは 長崎で 紳士服の職人ば しよったとです。」
糸子「はあ…。」
周防「ばってん ピカで 店でん 家でん 焼けしもたけん 岸和田に来たとですよ。」
糸子「店も家も 焼けてしもたんですか?」
周防「ふんさ。」
糸子「そら 気の毒な事でした。」
周防「ほんなことねえ。 そいばってん 嫁も子供達も 命ばっかりは 助かったけん ま~だ よかったって 思っとっとですよ。」
糸子「奥さんも 子供さん 無事やったんですか?」
周防「はい そうです。」
糸子「ああ ああ…。」
周防「長崎弁は 分かりにくいですか?」
糸子「ああ… いや うち 長崎の人と しゃべんの 初めてやさかい。」
周防「おいも 最初ん頃 大阪弁は 分かりにくかったです。」
糸子「ほうですか。」
周防「はい。」
糸子「はあ~!」
北村「ああ~! 紅一点!」
糸子「はっ?」
北村「初めて 女の商売人が 交じるっちゅうさかい 楽しみにしちゃあったのに あっかい花が来る 思ちゃあったら ただの里芋じょ!」
(笑い声)
糸子「はあ?」
(笑い声)
北村「まあ 勘弁しちゃら。 ほれ!」
糸子「お酒ですか?」
北村「当たり前じゃ。 水なんか出すけ! 何や あんた。 ひょっとしたら 酒 飲んだ事ないんちゃうんけ?」
糸子「はっ! ハハハ~ なめんとい下さい。 うちは 岸和田では 有名な酒豪で とおってます。 ふん。」
北村「ふん。」
「あんた ほんまに 酒 飲めるんけ?」
「無理すなよ ねえちゃん。」
糸子「小原です! ほな 皆さん 末永う よろしゅう。」
「うわ|~!」
「ほんまかいや?」
「酒豪やな!」
「えっ?」
糸子「あ… うまい!」
「うまい?」
糸子「ハハッ! うまい! どうぞ。 頂きます。」
<うちは 自分が お酒を飲める ちゅう事を 初めて知りました>
糸子「あ~ うま!」
<そやけど 飲み過ぎたら 酔っ払うちゅう事も知りました>
周防♬『遊びに行くなら 花月か 仲の茶屋 梅園裏門 たたいて 丸山 ぶうらぶら ぶらり ぶらりと 言うたもんだいちゅう』
道中
(犬のほえる声)
<うん? どこや? うち 誰かに おぶわれてんのか?>
糸子「お父ちゃんか?」
周防「うん?」
<あれ? うち… 年 なんぼやったっけ?>
(犬のほえる声)