ひなたの部屋
ひなた「はい。 残りもんで悪いけど あっためたから。」
一恵「ありがとう。」
ひなた「それで? 何かあった?」
一恵「ひなちゃん。 私 いつまで ほっとかれんのやろ。」
ひなた「えっ?」
一恵「榊原さんに。」
ひなた「あんまり会うてへんの?」
一恵「あんまりどころか 全然。」
ひなた「そうなんや…。」
一恵「大体 私ら ホンマに つきおうてんのやろか。」
ひなた「えっ?」
一恵「榊原さんが失恋しはって。私が お茶に誘て。 そしたら お礼や言うて映画に誘てくれて。 そのあと ごはん食べに行って『今度 嵐山行かへん?』言うて。 それから 誕生日とか クリスマスとか イベントごとは一緒に過ごして…。」
ひなた「いやいやいや それ 完全につきおうてるて。」
一恵「けど… 言葉にして言うてもろたことあらへん。」
ひなた「その手のことには 口下手なタイプちゃう?」
一恵「私 もう34え!」
ひなた「知ってます。 同い年やし。」
一恵「何なん? あいつ。 なあ ひなちゃん。 あいつ 何考えてんの? もしかして すみれさんのこと 忘れられへんわけ?」
ひなた「いや それはない思うけど。」
一恵「榊原さん 言うてはった。 すみれさんが結婚しはった時。」
回想
榊原「僕は満足なんや。 すみれさんが 機嫌よう笑てくれてはったら。 それが僕の すみれさんを思う気持ちや。」
回想終了
一恵「それ聞いて 私 思たん。 あほな人やなあって。 あほやけど すてきな人やなあって。 けど… きっと 私には そんなふうに思てくれてへん。」
ひなた「いっちゃん…。」
一恵「フフフ… ごめん。 ひなちゃんに ぶつけてしもて。」
俳優会館
廊下
榊原「よいしょ…。」
ひなた「榊原さん。」
榊原「うわっ!」
ひなた「ちょっと お話が。」
榊原「何?」
ひなた「いっちゃんのことで。 今晩 うちいりに行ってください。 いっちゃんにも 行くように言うてありますから。」
榊原「ごめん。 今夜中に この資料 作ってしまいたいさかい。」
ひなた「榊原さん! いっちゃんって 小さい時から しっかりもんなんです。 いっつも私の世話 焼いてくれて…。」
回想
ひなた「面目ねえ。」
一恵「ほら やろ。 手伝うてあげるさかい。」
ひなた「どないしよう… 間に合わへん…。」
一恵「ほら はよしい。 手伝ったげるさかい。」
ひなた「ありがとう…。」
回想終了
ひなた「初めてなんです。 いっちゃんが あないに不安そうな顔して 私を頼ってくるやなんて。 そやから…。」