るい「♬~(ハミング)」
るい「もういいんですか?」
錠一郎「うん。」
るい「よかった。」
錠一郎「何 見てたん?」
るい「えっ。 海… です。」
錠一郎「そっか。 これ 渡っていったんかあ。」
るい「えっ?」
錠一郎「ほら いつかニュースで見た ヨットの人。」
るい「あっ 堀江謙一さん?」
錠一郎「そう そう そう。 サンフランシスコまで行ったっていう。」
るい「ホンマに つながってるんですね。 この海が アメリカに…。」
ベリー「止めて~!」
トミー「どこ行くんや 戻るんか?」
ベリー「当たり前や。 ジョーとサッチモ 2人きりにするわけにはいかへん!」
トミー「やめとけ! あの2人は 共鳴し合ってんねん。 ええセッションは響き合う。 出会ったことが運命やったみたいに。 楽器と楽器が 音と音が響き合う。 求め合う。 引かれ合う。 そして… 同じ夢を見るんや。」
錠一郎「お母さんの顔が浮かんでる?」
るい「大月さんこそ。 トランペットが聴こえてますか? ルイ・アームストロングの吹く トランペットが。」
錠一郎「吹いてみたいなあ。 いつか… アメリカの空の下で トランペットを。 『On the sunny side of the Street』を 吹いてみたい。」
トミー「諦めろ。 サッチモちゃんにしか ジョーの気持ちを変えられへん。」
ベリー「私は あんたに 利用されただけってこと?」
トミー「悪いなあ。 これも 日本のジャズの未来のためや。」
(ドアの開閉音)
ベリー「言うとっけど 私は負け犬やあらへん。 ジョーが 世界に認められる トランぺッターになったら 私の勝ちえ。」
トミー「ベリー。 僕と共鳴せえへんか?」