ひなた「お母ちゃん。 このおっちゃんに回転焼き焼いたげて。」
るい「えっ? どのおっちゃん?」
ひなた「そやから このおっちゃん…。 あれ?」
<それきり サンタは ひなたの前に姿を現しませんでした>
居間
錠一郎「お~。」
桃太郎「大丈夫や。 PLやったら返せる! なあ お父ちゃん。」
錠一郎「おう。 桃太郎。」
回転焼き屋・大月
るい「お待たせしました。 どうぞ。」
テレビ『今日は 延長に及ぶ熱戦。 10回の裏 8対4。 取手二高リード。 追い込まれたPL学園 ツーアウト』。 『三線!』。
2人「あ~!」
桃太郎「清原~!」
テレビ『取手二高 初優勝!』。
桃太郎「負けた…。」
小夜子「残念やったね 桃ちゃん。」
桃太郎「小夜ちゃん。」
小夜子「でも 清原君て まだ2年でしょ?」
桃太郎「うん うん。」
小夜子「まだ来年があるやん。」
錠一郎「小夜ちゃん。 いらっしゃい。」
小夜子「おじさん。 こんにちは。」
ひなた「小夜ちゃん? 久しぶり。」
小夜子「あっ ひなちゃん。 いてた。」
ひなた「今日は休みなん。 小夜ちゃんは?」
小夜子「私は 夏休み。」
ひなた「あっ そうか。 ええなあ 学生は夏休みがあって。」
小夜子「アハハッ。」
テレビ『続いてのニュースです。 桃山剣之介の主演映画 『妖術七変化! 隠れ里の決闘』 主人公 棗 黍之丞の敵役となる俳優が 今日 発表されました』。
錠一郎「ひなた。 これ 五十嵐君 受けたやつか?」
ひなた「そう そう そう そう!」
るい「何? ひなた。 あんた 結果知らされてへんの?」
ひなた「こんな極秘情報 私んとこまで来いひんて。」
テレビ『1,500名の候補者の中から 選ばれたのは…』。
俳優会館
中庭
ひなた「おなか壊すで。」
五十嵐「いいよ 別に!」
ひなた「そないに やけにならんでも。」
五十嵐「お前にはな 俺が あのオーディションに どれだけ懸けてたか 分かってないんだよ。」
ひなた「あんた まだ養成所出たばっかりの新人やろ?」
五十嵐「あの受かったやつだって まだまだ無名だろ ばか!」
轟「ばかは お前や。」
五十嵐「監督!」
轟「お前なんか ホンマやったら 書類で落ちてるわ。」
五十嵐「えっ…。」
轟「最終選考は悪なかったけどな。 まあ それは 虚無さんに引っ張られて 実力以上が出せただけや。 ほれ。 マルつけたある役 お前で どやて モモケンさんが言うたはる。」
五十嵐「えっ。」
轟「わしも異論あらへんし。」
五十嵐「あ… ありがとうございます!」
轟「頼むで。」
五十嵐「えっ えっ。 えっ! ん! ん ん ん! 伊織…。 役名がある!」
ひなた「えっ ちょっと… どんな役!?」
五十嵐「やめろ やめろ やめろ! 破れたら どうする!」
ひなた「あっ ごめん。 よかったなあ 五十嵐。 おめでとう。」
五十嵐「ありがとう。」
ひなた「手伝おか? 読み合わせとか。」
五十嵐「ハハッ いいよ。」