玄関前
回想
小夜子「明徳の子かて かわいそうやわ。 最後の夏に こんな…。」
回想終了
桃太郎「(心の声)『かわいそうやわと 君が言ったから 8月16日は… 8月16日は あ~ 小夜ちゃん 好きや~! 記念日。』」
俳優会館
廊下
一恵「ひなちゃん おはよう。」
ひなた「あれ いっちゃん おはよう。 今日 『水無月ぼたん』の撮影やったっけ?」
一恵「ううん。 今日は 養成所のお稽古。」
ひなた「へえ~。 もう すっかり大先生やなあ。」
一恵「やめてえな。 榊原さん。 おはようございます。」
榊原「ああ…。」
ひなた「これ 会報出来ました。」
榊原「ああ ありがとう。」
ひなた「どないしたんやろ。」
一恵「何やろ?」
ひなた「うん?」
休憩所
ひなた「甲子園やろか。」
テレビ・凛太朗『9年前 『破天荒将軍』に ゲスト出演していただいた時が最初です』。
ひなた「えっ…。」
『それから交際を続けてたんですか?』。
凛太朗『いえ…』。
すみれ『私が主演する 『茶道家 水無月ぼたんの事件簿』に ゲストに出ていただいて 久しぶりにお会いしたんです』。
『お~。 めちゃくちゃ普通ですね』。
『もうちょっと 破天荒なエピソードありませんかね?』。
凛太朗『アハハッ そんなこと言われてもねえ。 ハッハッハッハッハッ』。
太秦映画村
お化け屋敷
五十嵐「うおっ!」
虚無蔵「落ち武者の霊が 腰を抜かしてどうする。」
五十嵐「虚無蔵さん…。 扮装はしないんですか?」
虚無蔵「拙者は 扮装せずとも 暗闇に潜んで 現れればよいと言われておる。」
五十嵐「あ… そのままでも 怖いからですかね。 だから 怖いですって。」
虚無蔵「近頃 道場に姿を見せぬな。 鍛錬は1日怠れば1日分 3日怠れば3日分 それまで身につけたものを失う。 日々 鍛錬し いつ来るとも分からぬ機会に備えよ。」
五十嵐「いつ来るとも分からないって…。 永遠に来ないかもしれない。 そういうことですよね?」
虚無蔵「いかにも。」
五十嵐「もう7年ですよ? 『妖術七変化』に 伊織の役で出てから もう7年。 いまだに あれ以上の役を もらったことがありません。 ドラマやステージで ただ斬られて死んだり 時代劇の扮装して 道案内したり 落ち武者の恰好して カップルや 親子連れを キャ~キャ~言わせたり。 こんなの いつまで続くんですか?」
虚無蔵「拙者は 40年 斬られ続けておる。」
五十嵐「俺には理解できません。 虚無蔵さんだって 一度は 強いライトを浴びたんじゃないですか。 俺なんかより もっと強いライトを。 そこから 30年近くでしょ? 何で耐えられるんですか? こんな屈辱に。」
虚無蔵「文四郎。 傘張り浪人とて 刀を携えておる限りは侍だ。 あべこべに いくら刀を振り回しておっても いとしいおなごを泣かす者は 真の侍にあらず。 おひなを泣かすな。 泣かせたら その時は…。」
大月家
回転焼き屋・大月
ラジオ『大会11日目の3試合 県立岐阜商業 対 愛知の東邦』。
森岡「来年は ももたろさんの高校も 出られたらええなあ。」
錠一郎「そうですねえ。」
森岡「今日も部活か?」
錠一郎「ええ。 盆休み以外は毎日。」
森岡「はあ~ 大したもんやなあ!」
るい「ただいま~。」
錠一郎「ああ お帰り。」
るい「よかったわあ。 牛肉 安うなってて。」
森岡「うわっ えらい豪勢やな。」
錠一郎「ああ 桃太郎の誕生日なんです。」
森岡「へえ~!」
るい「森岡さん 後でビール1ケース 届けてくれはる?」
森岡「えっ。 誰が飲むんや。」
錠一郎「あっ 今日 五十嵐君が来るんです。」
森岡「五十嵐君…? あっ ひなたちゃんの彼氏か!」
るい「そうです。」
森岡「弟の誕生祝に来るやなんて これはもう いよいよ! 近々やなあ!」
錠一郎「いや~ まあ どうですかねえ。」
森岡「いや そうや。」
錠一郎「アッハハッ。」