さくら「倍速で見たって それで作り手の収益は変わらなくない?」
ミワ「それでも私は 映画に敬意を払いたいです。 映画には お金では はかれない 作り手の情熱とか人生が 詰め込まれてると思うから。」
<し… しまった! 今 世界で一番 機嫌を損ねてはいけない 相手を 怒らせてしまった…?>
ミワ「さくらさん…。 え え えっ!? えっ…。」
さくら「あなたって 相当 不器用な生き方をしてきたんだね。」
ミワ「え?」
さくら「たとえ自分が損をしても 他人の情熱や人生を尊重して 敬意を払う。 誰が見ているわけでもないのに。 あなた 悪い人じゃないね。 一時の過ちで 人生を台なしにするような人じゃない。 最近ひどいでしょ 罪を犯した人へのバッシング。 ネットで流れてる不確かな情報だけで まるで殺人でも犯したかのように 徹底的に個人を攻撃する。」
さくら「私 ああいうの大っ嫌い。 その人の罪に どんな背景があったのか 人間性考慮しないと フェアじゃないでしょ? 私が あなたという人を量る。 言ったでしょ? 私 きっちり量らないと 気が済まないタチだから。」
(オーブンの音)
ミワ「ク… クッキー…。」
さくら「焼けたね。」
ミワ「はあ はあ はあ…。」
さくら「いただきま~す。 ん~ おいひい! 私ね あなたのこと すごいって思ってるよ。」
ミワ「え?」
さくら「だって 家政婦でも何でもない人が 世界的俳優の八海 崇に そこまで近づけるなんて すごいじゃない。 私が家政婦になろうと思ったのも 八海サマに近づくためだったけど どう考えても あなたほど うまくやれなかったと思う。 できるとこまで続けたらいいんじゃない?」
ミワ「でも…。」
さくら「確かに あなたが八海サマに近づけたのは 偶然の産物かもしれない。 だけど その偶然を引き寄せたのは あなたの映画愛 そして 29年の人生で培った あなたの人間力でしょ? この幸運を享受する資格は 十分にあると思う。」
ミワ「でも バレたら…。」
さくら「しばらく続けて 自然な形で辞めたら なりすましなんてバレないよ。 そのかわり 私の作ったクッキーも ちゃんと渡してくれる? そのぐらいの権利あるよね?」
ミワ「は… はい もちろん。」
さくら「いや~ 自分の作ったクッキーを 八海サマが召し上がるなんて どうしよう! うれしすぎる! あっ ねえねえ どっちがいいかな?」
ミワ「こっちが。」
さくら「じゃあ 包んじゃうね。」
<彼女に対する疑問は いくつもあったけど それ以上 質問することは できなかった>