八海邸
書斎
(ノック)
藤浦「少し いいですか?」
八海「はい。」
藤浦「ミワさんの件なんですけど ちょっと厳しいかもしれません。」
八海「厳しい?」
藤浦「ボトルシップの件もありますし 買い物を頼んでも 一日かけて自転車で行くような人です。 使用期間が終わり ちょうど会社に 報告するタイミングなんです。 ほかの方に代えて頂いたほうが 無難かと。」
八海「そうですか。」
藤浦「では 手続きしますね。」
八海「待って下さい。」
藤浦「はい。」
八海「無難という理由で代えるのは どうなんですかね。」
藤浦「え?」
八海「うまく言えないんですが 彼女の行動には 気になるところがある… というか。」
藤浦「気になるって ただの家政婦ですよ?」
八海「たまにあるんですよ。 この人はなぜ そんな言動をとるのか その心理を追求したくなることが。 役者の性ってやつですかね。」
控え室
<意中の人に手作りクッキーを渡す。 例えば その相手が 同級生や仕事仲間であっても それは相当なプレッシャーだろう。 よりによって 私が渡す相手は… 神>
ミワ「吐きそう…。」
<八海サマ 今日は家にいらっしゃるのかな…>
一駒「今日は いらっしゃいますよ ご主人様。 はい。」
ミワ「そうなんですね。」
一駒「今日は まず 3人でリビングの掃除をいたします。 」
ミワ「はい。」
一駒「ご主人様は 新作映画の準備を されているようですので 物音は控えめに 拭き掃除中心でまいりましょう。」
池月「はい。」
ミワ「分かりました。」
一駒「くれぐれも ご迷惑にならないようにお願いしますね。」
<迷惑…>
池月「ミワさん ちょっと…。」
ミワ「何ですか? その箱。」
池月「ファンからのプレゼント。 事務所の決まりで 食べ物は処分することになってるの。」
ミワ「ああ…。」
池月「手作りのチョコレートとか パンとか。 まあ 悪気はないんだろうけど 万が一のことがあったらね。 これ 開けてみて。」
ミワ「はい それは全部…。」
池月「これも手作りね。」