とよ「うん いんでないかい。 あんこの風味で バタ臭くないしね 煎餅も やわらかくなってきて 年寄りにもいけるよ これなら!」
雪次郎「そうかい。 おやじは?」
雪之助「こしあんも試したのかい?」
雪次郎「こしあんは バタークリームと なじみ過ぎるんだわ。 粒あんが6 バタークリームが4くらいの割合が ちょうどよかった。 それに 一番相性がよかった 焼き塩を 隠し味に使ったんだわ。」
雪之助「初めて… お前に先越されたわ。」
雪次郎「したら これ 雪月で売っていいのかい?」
雪之助「うん。 売らなきゃ そのうち 誰かに作られちまうべや ハハハハ…。」
雪次郎「よし!」
なつ「やったね 雪次郎君!」
雪次郎「うん… これで もう やっと一人前だ」
雪之助「それは まだ早い。」
(笑い声)」
雪次郎「夕見子ちゃん おバタ餡サンドのバターは 今度 夕見子ちゃんの工場で作るバターを 使うつもりだ。」
夕見子「うん。 そうして。」
雪次郎「夕見子ちゃんの作るバターが 十勝の 雪月の菓子になるってことだ 夕見子ちゃん。」
夕見子「そったらこと 言わなくても分かるって。」
雪次郎「夕見子ちゃんの作るバターと 十勝の菓子がくっつくんだわ。」
夕見子「は?」
雪次郎「これは もう 夕見子ちゃんと 十勝の菓子屋が くっつくのと同じだべ。 夕見子ちゃんと雪月が結ばれる運命だと 言っても過言ではねえべさ。」
夕見子「過言すぎて 意味分かんないわ!」
雪次郎「したら 分かるように言うべ…。 夕見子ちゃん 俺と結婚してくれ。」
夕見子「えっ!」
雪次郎「俺と結婚して下さい!」
なつ「雪次郎君…。」
天陽「雪次郎…。」
妙子「お前… 何を言いだすの?」
とよ「血迷ったかい?」
雪次郎「俺は ずっと この日を待ってたんだわ。 夕見子ちゃんに そう言える日を…。 今日 みんなに集まってもらったのも そのためだ。」
夕見子「なして みんなを集めなきゃいけないの。」
門倉「十勝の男は 昔から 人前で プロポーズするのが習わしだ。」
良子「それは あんただけだべさ!」
門倉「雪次郎 よく言った! みんなの前でフラれても すぐに諦めがつくからな…。」
良子「あんたは 私を諦めなかったべさ。」
門倉「バカ やめろ お前…。」
雪次郎「夕見子ちゃん… 夕見子ちゃんは 夕見子ちゃんらしく はっきり答えてくれ。」
夕見子「知らんわ そったらこと…。」
なつ「夕見 待って! こうなったら 逃げるわけにはいかないべさ!」
夕見子「私でいいのかい…。」
雪次郎「えっ?」
夕見子「本当に… 私でいいのかって聞いてんの! おじさん おばさん とよばあちゃん… 私は 雪次郎君と結婚するような そったら資格は ないかもしれないのさ。」
雪之助「資格? そったらこと あるわけねえべさ。」
妙子「そったらこと あるわけないべさ!」
とよ「東京に駆け落ちしたって話かい? 私は あれを聞いて 夕見子ちゃんを見直したね。 もしかして そったらこと気にしてんのかい?」
雪次郎「したら 俺にも そんな資格はねえ。」
倉田「結婚に必要なものは 資格ではない。 覚悟だ。」
なつ「夕見には その覚悟があるの?」
雪次郎「俺にはある! 結婚しても 夕見子ちゃんのしたいことすればいいべさ。 うちの家族の前で それを約束する。 俺は夕見子ちゃんが好きだ。 昔っからだ。 今は もっと好きだ。」
夕見子「私は もし 結婚するとしたら あんたしかいないと思ってた。」
雪次郎「えっ… いつ… いつから?」
夕見子「いつって… いつの間にか そう思ってたわ。」
雪次郎「本当かい? 本当かい 夕見子ちゃん? やった! なっちゃん やったわ!」
なつ「うん… 雪次郎君 夕見 おめでとう!」
(拍手)
とよ「雪次郎…。」
門倉「雪次郎 おめでとう!」