下山家
茜「赤ちゃんを預けるの?」
なつ「うん… それしかないと思って。 イッキュウさんは 働きに行きたいんだもん 本当は。 それを我慢してるのが分かるの。」
茜「なっちゃんは 本当に それでいいの? 困らないの?」
なつ「やっぱり 子どもを預けるのは大変なんですか?」
茜「うん… もう大変よ。 0歳児を預けられる所を見つけるなんて 奇跡に近いかもね。 せめて 1歳ぐらいにならないと 預かってくれる所は 本当に少ないと思う。」
マコプロダクション
下山家
なつ「1年か…。 でも イッキュウさんにも やっぱり 夢を諦めてほしくないんです。」
茜「イッキュウさんは ただ 諦めてるだけじゃないと思うわよ。」
なつ「えっ?」
茜「実は イッキュウさん なっちゃんが 昼間働いてる間 ここに 何度も来てるのよ。」
なつ「ここに?」
茜「うん。 子育てのことを教えてくれって。」
なつ「茜さんに?」
茜「明子のオムツを取り替えてくれたり ミルクの作り方を覚えたり あっ それに オムツの縫い方まで覚えたのよ。」
なつ「あの人が そんなことまで…。」
茜「恥ずかしいから なっちゃんには ないしょにしてくれって言われてたけど。 楽しそうに見えたな。 待ちわびてるのよ 子どもが生まれてくることを。」
マコプロダクション
麻子「イッキュウさん!」
下山「おい!」
麻子「アッハハハ… よく来てくれたわね。」
坂場「下山さんは もう ここに移ったんですか?」
下山「いや まだだよ。 でも 東洋動画には話してあるんだ。 別に 引き止められやしなかったから 円満退社だ。」
坂場「そうですか。」
下山「うん。 なんとかして ここを日本のアニメーションの 新天地にしてやるよ。」
坂場「新天地か。」
麻子「散らかってて驚いたでしょ? まだ作画作業には入ってないんだけど 下山さんと 企画の打ち合わせをしていたところよ。 これ。 ここで 少数精鋭でやっていこうと思ってる。 動画と仕上は 更に下請けに 外注したりもしなきゃいけないけど だからこそ 好きなものが作れると思ってる。」
下山「うん。 イッキュウさんも 是非 ここで一緒にやろうよ。」
坂場「そうですね… 面白そうですね。」
(笑い声)