なつ「東京にいるかどうかも。」
天陽「うちの兄貴に捜してもらおうか?」
なつ「ううん 柴田家の人たちも 手を尽くしてくれたんだけど 兄は 私を 捨てたかったのかもしれない。 ハハッ…。」
天陽「そんなことないよ。 うちの兄貴だって 家族を捨てたわけじゃないもん。 ね?」
タミ「そうよ。 うん。」
なつ「そうだね。」
天陽「うん。」
<天陽君の兄 陽平さんは 東京に出て 芸術大学に入りました。 天陽君は お兄さんとは 同じ道を選ばず ここで 農業をしながら 絵を描くことに決めたようです。>
なつ「私 そろそろ行くね。 少しは 牛のこと手伝わんと。」
天陽「あっ なっちゃん。」
なつ「うん?」
天陽「実は 今 うちにも 牛がいるんだ。」
なつ「えっ?」
庭
正治「やあ なっちゃん。」
なつ「おじさん。 牛飼うことにしたって本当ですか?」
正治「うん。 乳牛を 一頭だけ 農協から借りたんだわ。」
なつ「農協から? 農協が 牛を貸してるんですか?」
正治「そうだよ。 あれっ 剛男さんから聞いてないかい? 剛男さんに勧められたんだわ。」
なつ「うちの父さんに?」
牛舎
なつ「いい牛じゃないですか! 健康そうな黒白だわ。」
正治「クロシロ?」
なつ「ホルスタインは 黒の部分が多かったら黒白 白が多かったら白黒っていうんです。 乳は よく出ますか?」
正治「出ますよ。 既に 子牛を産んだ牛だからね。 搾乳は うちじゃ 天陽が一番うまいかな。」
なつ「本当だ うまい!」
正治「この牛に 子牛を産ませて それがメス牛なら 農協に返せばいいんだ。」
なつ「あ~そうか。 牛乳は これから どんどん高く売れるって じいちゃん言ってたから 牛を飼うことは いいことですよ。」
天陽「だけど これからは 牛の飼料になる作物だって 育てないば ダメだろ。 その分 畑も広げないとな。」
なつ「それじゃあ うちのサイロにあるサイレージ 少し分けてもらえるかどうか じいちゃんに聞いてみる。 きっと じいちゃんも 喜んで協力してくれると思うよ。 天陽君が 牛を飼うと知ったら。」
天陽「喜ぶかな?」
なつ「ハハハ… 喜ぶに決まってるっしょ。 じいちゃんと天陽君は 馬が合ってるんだから。」
<なつは 今では すっかり 柴田家の人間です。 だけど 名前は 奥原なつのまま…。 いつか そこに 戻らなければ いけないような気もしていました。>