静子「いい子に 育ってますよね。」
勝子「そうですね。」
静子「ずっと このまま 育ってほしいな。」
ハナ「大丈夫よ。 和也君と お父さんが 見守っているからねぇ。」
静子「はい。 ねえ 私達 おばあちゃんなのよね。」
勝子「そうだよね。」
静子「もう…。 ねえ 勝子さん おばぁ。」
勝子「何?」
ハナ「ん?」
静子「あの時 無人島で 和也が 海に入り 水を恵里ちゃん達と かけあって。」
勝子「うん。」
静子「あの時 私 とっさに写真撮ったの。『和也の記録 残したいな』って。 撮りながら『自分は 一体 何やってるんだろう』って。 和也が もうすぐ いなくなってしまうから 記録したいなんて『何やってるんだろう』と。」
静子「本当はね 一緒になって ふざけたかったんだ。 水かけたりして…。 やりましょう!」
勝子「え? この年の女 3人で?」
静子「ダメかな やっぱり。」
勝子「ダメじゃないさ やろう おばぁ!」
ハナ「おばぁは いつでも OKさ。」
静子「じゃあ!」
勝子「よいしょ!」
ハナ「やれ!」
静子「和也 おいで。」
静子「うわぁ! 冷たい!」
古波蔵家
縁側
恵里「お父さん。」
恵文「ん?」
恵里「気をつけてよ 本当に。 嫌だからね ドキッとしたさ 聞いた時。」
恵文「はい 分かりました。 どうなの? 恵里は。」
恵里「どうって?」
恵文「幸せなの?」
恵里「うん 幸せだよ。」
恵文「そう よかったさ。 ただ 忘れないでほしいんだ。 元を たどっていくとさ。」
恵里「ん 何?」
恵文「たどっていくと お父さんが民宿を はじめようと思いついたのが 始まりだからね。 それがなければ 恵里は 文也君と出会う事もない。 分かる?」
恵里「そっか。」
恵文「そうさぁ。」
恵里「でも そう考えると 不思議だよね。」
恵文「人が生きていくって事は 不思議な事ばっかりさ。」
恵里「私さ 和也見てて 時々 思う。 お父さんとお母さんも このように 私の事 見ててくれたのかなって。『まだ 新米だけど 親なんだな 私も』って。」
恵文「親に新米も ベテランもないさ。」
恵里「そうだね。」
恵文「そう…。 でも なんか あれだね。 恵里と2人 こんなふうに話す事 あんまりなかったさ。」
恵里「そうだね。」
恵文「でも うれしいさ お父さんは。」
恵里「うん。」
恵文「何をしようかね 2人でね。」
恵里「うん。」
島袋「こんにちは! 島袋です。 ハイサイ! 恵里ちゃん 久しぶり。 あれ? 小さいのは?」
恵里 恵文「ハハハ…。」
島袋「何が おかしい訳ですかね?」
恵文「何でもないさ。」
島袋「これ 和也君に おみやげ。」
恵里「え! ありがとうございます。」
恵文「ああ。」
島袋「いないの?」
恵文「いないの。」