奈々子「下柳さん!」
聡子「何? 何?」
奈々子「何でですか? 何で 私? 何で 私? 何で 私?」
聡子「何が?」
奈々子「あの子ですよ 古波蔵恵里…。 何で 私なんですか? 何でですか 何でですか? もう一人の新人は 優秀で楽なのに 何で何で 私なんですか? 教えて下さい。」
聡子「え… いや やっぱり あなたかなと思ってね。」
奈々子「は? 何ですか?」
聡子「あの いろいろ考えたんだけどね 彼女と組むには 余り繊細で デリケートな人だと 無理だと思った。」
奈々子「はあ…。」
聡子「どっちかって言うと 何があっても こたえない。 そういう人がいいなと思ったの。 で 考えた結果 あなたしかいない。」
奈々子「はあ…。」
聡子「だから 決めたの。 という訳で よろしくね。」
奈々子「え… チョット…。」
聡子「肩凝りに気をつけてね。」
奈々子「え? ついてない…。」
ナースステーション
恵里「先輩 トイレ 長いねぇ。 何やってんだろ?」
恵里「あ どうかされました?」
奈々子「どうもしないわよ。 どんどん 行くわよ。」
恵里「はい!」
小児科病棟
(ノック)
文也「よっ!」
哲哉「こんにちは。」
文也「こんにちは。 どうだ? 調子は。」
哲哉「分かんない。」
文也「そっか…。 じゃ~ん 約束してたジグソーパズル。」
哲哉「あ サンキュー。」
文也「どういたしまして。 今度 一緒に作ろうな。」
哲哉「うん。 ねえ 先生。」
文也「『先生』は やめろって てれくさいからさ。 まだ一人前じゃないって言ったろ。」
哲哉「僕は… 死んじゃうの?」
文也「何で?」
哲哉「だって 皆 優しいしさ。 こないだ お母さん泣いてるの 見ちゃったんだ。 だから『そうなのかな』って…。」
文也「考えすぎだよ 治るって。」
哲哉「うん…。」
文也「哲哉はさ…。 俺の兄貴と 同じ病気なんだ。」
哲哉「先生のお兄さん?」
文也「ああ…。」
哲哉「その人 元気なの? 治ったの?」
文也「ああ 元気だよ。 もう すっかり治っちゃってさ ピンピンしてるよ。」
哲哉「本当に?」
文也「沖縄って 知ってるか?」
哲哉「うん。」
文也「沖縄にさ 小浜島っていう 小さな島が あってさ メチャクチャきれいな いい所なんだ。 そこに いるよ。 海が よく見える所に 住んでる。」
哲哉「へえ…。」
文也「だから つまんないこと 考えないで 先生と看護婦さんの言うこと 聞いてれば 元気になるから。 な。」
哲哉「うん 分かった。」
文也「また 様子 見にくるからさ。」
哲哉「はい。」
内科病棟
小児科病棟の方で文也を見かける恵里
恵里「文也君…。」
奈々子「チョット… 何やってんの?」
恵里「あ すみません。」