古波蔵家
勝子「おかあさん 電話 鳴りませんか? さっき 電話したら 恵里は 出かけてるって…。 今日は休みだって 恵達 言ってたんですけど。」
ハナ「おばぁに 言われてもね。」
勝子「鳴りませんか?」
ハナ「鳴らんね。」
勝子「(ため息)」
恵文「そんな イライラしても 勝子 どうにもならんよ。」
勝子「分かってるさ そんなこと。」
恵文「なんか いつもと逆だね。」
勝子「あの 私 チョット 買い物行くけど 恵里から電話があったら もう一度 かけるように言って下さいね。」
恵文「はい はい。」
勝子「(ため息)」
恵尚「なあ おばぁ。」
ハナ「何?」
恵尚「何を あんなに ソワソワしてるわけ? オフクロさんは…。」
恵文「だからよ う~ん。」
ハナ「勝子さんには 夢があるわけさ。」
恵文「『夢』?何の?」
ハナ「恵里の結婚式の…。」
恵文「あ?」
恵尚「どういうことよ? おばぁ。」
ハナ「恵文… お前と勝子さんのことを 思い出してごらん。」
恵文「ん?」
ハナ「勝子さんは お前と結婚する時に 恵尚が お腹にいたからね。」
恵文「うん。」
ハナ「で 島に来た時には お腹も こんなに大きくて ちゃんと 結婚式できなかったさ。 うちで お祝いは したけどね。」
恵文「ああ であるねぇ。」
ハナ「勝子さんは 勝子さん側の親せきに 花嫁姿を見せられなかったさぁ。」
恵文「そうだね。」
ハナ「だから 恵里には 花嫁衣裳を着せたいんだろうね。 沖縄風にしてほしいのでは…。」
恵文「それでか…。」
ハナ「おばぁは そう思うけどね。」
恵尚「じゃ 俺のせいだね。」
恵文「はあ? 何を言うか? 恵尚 怒るよ お父さんは…。」
恵尚「うん…。」
恵文「二度と言うんじゃないよ! そんなこと。」
恵尚「はい。」
恵文「分かれば いいさ。」
恵文「恵里は どうするつもりかね?」
恵尚「やってくれるかね 恵里は。」
ハナ「それは どうかねぇ。 ヤマトに お嫁に行くんだから。」
恵文「そうか… そうだよねぇ。」
ハナ「どうした?」
勝子「ハハハ 財布 忘れてしまったさ。」
恵文「珍しいねぇ。」
勝子「じゃ 行ってこようねぇ。」
ハナ「ん! 待った!」
勝子「え? あ 電話ですか?」
ハナ「鳴るよ そうさ 恵里からよ。」
(電話の呼び鈴)
勝子「もしもし? 恵里? どうしたの?」
カフェ
恵里「あのさ お母さん 結婚式のことなんだけどさ。 文也君と いろいろ 話し合ったんだけど。」
古波蔵家
勝子「うん… うん… うん…。 うん…。 うん…。 そう…」
勝子「うん… 分かった。」
カフェ
恵里「何か まずいことあるかなぁ。 どう思う? お母さん。 何かあったら 教えて。」
古波蔵家
勝子「ううん ないよ。 2人で ちゃんと 話し合って 決めたんでしょ? うん それでいいさ お母さんは うん… で いつになるの? …うん そう 分かった。 じゃあね。」
恵文「何て? 恵里 何て?」
勝子「うん 結婚式は 東京でやるって。 えで お互いの家族と ごく親しい 人たちだけでやるって 東京で…。 新婚旅行は 行かないって。 いつか 休みとれる時があったら 沖縄に親せきにも あいさつに来たいって。」
ハナ「そうねぇ。」
勝子「恵里は ウエディングドレス 着るらしいよ。 いつかは まだ 分からないって。 看護婦さんと お医者さんだから 休み 合わせるのが 大変らしくて 決まったら 知らせるって。」
恵文「うん。」
恵尚「いいの? オフクロさんは それで…。」
勝子「え? あ… 分かってた? そりゃ チョット 沖縄風の してほしかったけど でもさ 私が するんじゃないし それに 今の恵里の電話 すごく しっかりしていたさぁ。」
勝子「 2人で ちゃんと話し合って 決めたっていうのが よく分かったし 自分たちの出来る範囲で やろうとしているのは それは いいことでしょう。 だから もう いいさぁ。」
恵文「うん。」
恵尚「でもさ。」
勝子「ダメだよ。 ほんのちょっとでも 恵里の 祝い事に ケチをつけたら ダメだよ 恵尚。」
恵尚「うん。」
勝子「似合うだろうねぇ ウエディングドレス。 かわいいはずねぇ。」
ハナ「そうだねぇ。」
勝子「ええ。」
恵文「勝子。」
勝子「ん?」
恵文「飲もうか?」
勝子「うん 皆で 飲もうか。」
ハナ「そうだね。」
恵尚「うん。」
勝子「支度しようね。」
ハナ「うん。」