スリーJプロダクション
鈴鹿「勝手に進めた事は謝ります。 だけど もう決めた事ですから。」
春子「いやいや いやいや…。 決めるのは 社長の私ですから。 あなたは 一所属タレント。」
鈴鹿「『一』って…。 一人しか いないのにね。」
荒巻「フフフフフッ! すいません。 半分は 私の責任…。」
春子「そこに貼らないで。」
黒川「ごめん。」
鈴鹿「やっと見つけたんです。 私に できる事 私が やらなきゃいけない事。 今まで 女優として 役を介して 東北の皆さんに元気になって もらいたいなと思ってきたけど…。 もっと 直接 励ましたい。 生身の鈴鹿ひろ美の声をね 届けたいって。」
春子「リサイタルという事は 歌を歌われるという事ですよね。」
鈴鹿「歌以外に表現方法あります?」
春子「ありますよ! 朗読とか ポエトリーリーディングとか あと 詩吟とか? ねえ。」
荒巻「あると思います。」
春子「むしろ 被災地の皆さんも 喜ぶんじゃないですかね。 歌は ほら 持ち歌が少ないし ブランクもあるし!」
鈴鹿「音痴だし。」
回想
カーステレオ・鈴鹿の音程の外れた歌♬『来てよ その火を 飛び越えて』
荒巻「そう 彼女 音痴なんだ。」
春子「こういう歌かと思いました。」
荒巻「そうだね。 逆に誰も こんなふうに歌えないのよね。」
回想終了
鈴鹿「チャリティーソングのイベント 断ったでしょ 無断で。 傷つきました。」
春子「どうも すいません。」
荒巻「僕はね 提案したんだよ。 最悪 春子さんが 代わりに歌って…。 どうも すいません。」
鈴鹿「社長を責めてる訳じゃないの。 ただ… あなたは 自分が影武者だった事を 告白して すっきりしたかもしれないけど 私は まだ 渦中にいるんです。 闘ってるんです。 自分の 移ろいやすい音程と。」
黒川「う… 移ろい?」
鈴鹿「逃げるの もう嫌なんです。 下手でもいい 不完全でもいい 自分の声で歌って 笑顔を届けたい! ずっと コンプレックスだった。 移ろいやすい音程を 私なりに克服したり…。 そう思って 去年の夏から 口の堅い ボイストレーナーについて レッスンしてるんです。」
春子「そんなに前から?」
鈴鹿「今日は その成果を お見せします。」
荒巻「えっ! 鈴鹿さん歌うの!?」
黒川「うわっ どうしよう 心の準備が…。
春子「アカペラで?」
<太巻さん 正宗さん そして 私…。 偶然 あの時の3人です。 あれから 25年。 人々が失いかけている笑顔を 歌で取り戻してほしい。 果たして その思いは…>