北三陸駅
アキ「ストーブさん どうした? そんな所で たそがれて。」
ヒロシ「いや たそがれては いない。 風に当たろうと思って。」
アキ「気を付けて下さい。 ストーブさんは 自分が思ってる3倍は 負のオーラ 出てますからね。」
ヒロシ「…よく言われる。」
アキ「そんな顔で ホームさ立ってたら 誰が見ても飛び込むと思うがらね。」
ヒロシ「アキちゃん 今回は 本当に ありがとうね。」
アキ「いやいや 礼には及ばねえ。 おら 1票入れただけだもの。」
ヒロシ「親父もだけど それより ユイの事。」
アキ「ああ それこそ 礼には及ばねえ。 親友だもの。 それに おらの最終目標は 海女カフェの復活だ。 肝心のユイちゃんが 落ち込んでたら 海女カフェ建てても しゃあねえがらな。」
ヒロシ「アキちゃん 選挙行ったの?」
アキ「んだ。 おら もう 二十歳だもの 国民の義務だ。」
ヒロシ「お酒 飲んでる。」
アキ「まあな 形だけだ。 ヘヘヘッ。」
ヒロシ「へえ~ ヘヘヘッ。 あっ どうも どうも。」
アキ「まあ まあ まあ…。」
ヒロシ「そっか…。 初めて 北三陸 来た時 いくつだっけ?」
アキ「高2だがら 16だな。」
ヒロシ「あ~ まあ まあ…。」
アキ「まあ まあ…。」
ヒロシ「まあ まあ まあ!」
アキ「まあ まあ まあ! …って 何だか オッサンみでえ。」
(笑い声)
アキ「ストーブさん おら 変わったかな。」
ヒロシ「えっ?」
アキ「16ん時より 少しは 大人になったかな?」
ヒロシ「いや…。」
アキ「そうか。」
ヒロシ「ああ ごめん。 でも 嘘ついても しょうがないし。 アキちゃん 全然 変わらないよ。 それは でも すごい事だと思うよ。 東京の子が田舎に来てさ 海女になって 東京行って アイドルになって 映画に出て また帰ってきて… それで変わらないんだもの。 大したもんだよ。 普通 いろいろあるって。 いい気になったり 派手になったり 男できたり…。」
アキ「男は できたよ。」
ヒロシ「うん。 でも 基本は変わらない アキちゃんは。」
アキ「いがった。」
ヒロシ「いがった?」
アキ「うん。 芸能界さ いると… …っていうか 東京が そうなのかな。 成長しねえと 怠けてるみたいに言われるべ。 でもな『成長しなきゃ 駄目なのか?』って思うんだ。 人間だもの ほっといても成長するべ。」
アキ「背が伸びたり 太ったり 痩せたり おっぱい でっかくなったりな。 それでも変わらねえ。 変わりだぐねえ部分も あると思うんだ。 海女ちゃんだって 言われるかもしんねえけど それでもいい。 うん。 プロちゃんには なれねえし なりだぐね。」
ヒロシ「…。」
アキ「何だよ たそがれて。」
ヒロシ「いや…。『男は できたよ』のダメージが 予想外に重くて…。」
アキ「変わんねえな ストーブさんは!」
ヒロシ「ハハッ ハハハッ…。」
アキ「頑張っぺ 海女カフェ担当。」
ヒロシ「うん 頑張っぺ。」
アキ「あ~ うまぐねえ…。」