パチンコ屋
「天野春子? 袖の春子だべ。 俺 俺! 北三陸高校で…。」
春子「ごめんなさい。 今 出てるんで。」
春子「これ まだ出るから 打っていいよ。」
ヒロシ「えっ? いや でも…。」
春子「いいから いいから。 玉も全部あげるから。」
海
夏「アキ 帰るぞ!」
アキ「…。」
夏「何だ? おまはん 母ちゃんに置いていかれて 悲しいのが?」
アキ「ねえ おばあちゃんは 何で潜るの?」
夏「はっ? なんで? 哲学か… 何でって… おもしれえからだべな。」
アキ「潜ってる時は 海の中で 何 考えてるの?」
夏「何も考えてねえ。 ほかの事 考えてたら 潮に流されちまうべ。」
アキ「ふ~ん 怖いね…。」
夏「食うために ただ ひたすら潜って 取るだけだ。 そのうちよ ウニが お金に見えてきてよ『お金が こんなに落ちてる! 拾わねば~! ほかの誰かに 拾われてなるものか!』ってなあ。」
アキ「フフフフッ!」
夏「潜りてえか?」
アキ「えっ?」
夏「潜ってみっか 一緒に。」
アキ「無理 無理 無理!」
夏「なして? おもしれえど。」
春子「アキ…。」
アキ「だって 冷たいんでしょ? 泳ぐの苦手だし…。 息継ぎが できないの。 素潜りも駄目。」
夏「自分で取った ウニ 食ってみたぐねえか?」
頷くアキ
アキ「ねえ おばあちゃん 海の中 きれい?」
<『何すんだ この ばばあ!』 アキは 空中で そう思いました>