春子「あんまり静かで 床に もやしが 落ちる音が聞こえたのよ。」
大吉「そりゃあ 静かだ…。」
弥生「おらなんか もやしのヒゲなんて 取った事ねえもの。 面倒くせえから。」
今野「取れや~。 ハッハッハッハッ。」
春子「…っていうか 何で 私 こんなに しゃべっちゃってんだろう。」
大吉「打ち解けてきた証拠さ。」
春子「違うね。 電車が 1時間に 1本しかないからだね。 次の電車は?」
吉田「今 出たところさ。」
春子「えっ!?」
大吉「19時28分発 上り最終列車さ。」
吉田「今夜は もう帰れないさ。」
春子「ふざけないでよ!」
大吉「まあまあ! のんびりしていけば いいさ。」
春子「やだね。 だって ここさ うちの母親の店でしょ?」
大吉「大丈夫。 ここには来ねえから。 最近は 弁当が売れたら 帰るんだじゃ。」
吉田「僕や 美寿々さんが 交代で店番やってます。」
大吉「あっ 後輩の吉田君。 こう見えて 北三陸駅の副駅長な。」
大吉「ついでに紹介すると 琥珀掘りの勉さん。」
春子「琥珀って あの琥珀?」
勉「そうなんです。 あんまり知られていないですが 北三陸一帯 日本有数の琥珀の産地なんです。 ただ 使いみちが…。」
大吉「琥珀の話は面白くねえから やめるべ!」
弥生「うちの旦那 知ってんべ?」
今野「商工会長の今野です。 ほら あの銀座通りの ブティック今野。分かる?」
大吉「大体 こんな感じの 蛾みたいな服が置いてある店。」
(笑い声)
夏「は~い 皆さ~ん 閉店時間 過ぎてますよ。」
春子「嘘ばっかり!」
大吉「まあまあ こういう事もあるさ。」
夏「あららら 東京のお客さん まだ いだのすか?」
大吉「すっかり話し込んで 終電行ってしまったんだじゃ。」
夏「だったら 駅前に ビジネスホテルが ありますよ?」
春子「言われなくても そうします!」
夏「ありがとうございます。」
大吉「春ちゃん! 春ちゃん! 春ちゃん ちょっと待ってけろ! 春ちゃん! もう一軒だけ! いい店 知ってるから。」
春子「もう 何も 話す事ないんですけど。」
大吉「いや そう言わずに!」
スナック・梨明日
大吉「さあさあ こっちゃ こっちゃ さあ着いた! さあさあ! ここ ここ。」
夏「いらっしゃい! 7時半からは スナック営業なんです。」
春子「…どういう事?」
夏「そっちから出ていって こっちから入ってきたって事だね。 何か お飲み物は?」
<喫茶リアスと スナック 梨明日は 入口は 別々ですが 中は 同じ店なのです>
春子「嫌~!」
<ここで 私こと 天野 夏 64歳の 一日の流れを 簡単に ご紹介します。 午前4時 起床 顔を洗って グルッと散歩。 午前4時半 作業小屋で ウニ丼の仕込みを始めます。 出来上がった丼を 大吉さんの車で 北三陸駅まで運びます>
喫茶・リアス
夏「おはようございます。」
<午前9時 喫茶リアス開店。 そのあと 浜へ出て 午前中いっぱい 潜ります>
<正午 その日 売れ残った ウニ丼を 車内販売>
夏「ウニ丼は いかがですか~?」
天野家
<売り切ったら 家さ帰って 午後3時まで昼寝。 起きたら 浜に出て 日没まで潜ります。>
<午後7時半 スナック梨明日 開店。 飲んだり 食ったり 歌ったりして 午後11時 閉店。 大吉さんの車で帰宅。 風呂さ入って 午前0時過ぎに就寝で 午前4時 起床>
夏「あ~ いい天気だ!」