古山家
裕一「ただいま。 あ~ 疲れた。」
音「お帰りなさ~い! お疲れ様。」
裕一「ありがとう。」
音「ごはん もうすぐ出来るけど ごはんにする? お風呂にする?」
裕一「お風呂にすっかな? あ~ ありがとう。」
夕食
音「へえ~ その木枯さんって方 面白いのね。」
裕一「いや もう… こっち ヒヤヒヤしたよ。」
音「あっ! 牛島ゆたかって聞いたことある。 『海の喫茶店』の作曲家でしょう?」
裕一「あっ そうなんだ。 う~ん 流行歌のことも勉強しないとな~。 うん おいしい!」
音「裕一さんは 裕一さんの音楽を作ればいいじゃない。」
裕一「うん?」
音「西洋音楽の素養があるって強みだと思う。 裕一さんにしか書けん曲を 書いてほしいな。」
裕一「そうだね… 頑張るよ。 うん!」
音「うん。 おいしい?」
裕一「とってもおいしい。」
仕事部屋
音「どう? いいの 書けそう?」
裕一「う~ん… どうかな~?」
音「お夜食作ったから 一段落したら食べてね。」
裕一「うん! ありがとう。」
音「じゃあ 頑張って。」
裕一「うん! ちょうど小腹すいてた。」
音「うん よかった。」
裕一「ありがとう!」
裕一「えっ? フフフ…。 また八丁みそ?」
コロンブスレコード
廿日市「う~ん… これじゃ 駄目だな。」
裕一「えっ? いやいや あのあの… ど… どこが駄目なんでしょう?」
廿日市「駄目だよな?」
杉山「はい。」
裕一「えっ?」
廿日市「やり直して。」
裕一「はい…。」
その後
裕一「こんな具合で… いかがでしょう?」
廿日市「ちょっと違うかな~。」
廿日市「う~ん… 違うね。」
裕一「ち… 違う…。」
廿日市「没。 もう1回。」
裕一「ぐ… 具体的には ど… どこが…?」
廿日市「それを考えるのが 君のお仕事。」
廿日市「これじゃ駄目だな 書き直して。」
その後も 裕一の曲は全く採用されませんでした。
半年後
裕一「音 おはよう。」
音「おはよう!」
裕一「ねえ みそ なくなりそうって 言ってたよね? たまたまなんだけどね 白みそもあって…。」
音「あ~! もう こんな時間! 急がんと。」
裕一「いよいよだね。 が… 頑張って。」
音「ありがとう。 裕一さんも 今日は 曲の提出日だったよね。」
裕一「今日はね いけそうな気する!」
音「いける いける。 今度こそ 絶対採用されるよ!」
裕一「ありがとう。 頑張って。」
音「は~い!」
コロンブスレコード
裕一「ま~た駄目だった… 21曲 連続不採用。」
木枯「こっちも 19曲連続。 これ まずいわ。」
裕一「まずいね~。」
木枯「しかも そっては所帯持ちだもんな 金は どうすんの?」
裕一「まあ… 契約金は いっぱい残ってっから 当面は。」
木枯「はあ? あの契約金 印税の前払い金だぞ。」
裕一「どういうこと?」
木枯「レコード売れるのが前提の前払い金。 まあ つまり 自分の金じゃないってこと。 まあ 借金みたいなもんだ。」
裕一「しゃ… しゃ しゃ… 借金!?」
木枯「売れなかったら 全額返さなきゃいけない。 もし返済請求されたら 家族 養えなくなるぞ。」
東京帝国音楽学校
コロンブスレコード
裕一「うそだろ~…。」