振り返れば奴が居ないw
裕一「相変わらずの逃げ足。 久志?」
田中「失礼します!」
裕一「いや… ちょ… あの… あの…。」
田中「先生 話があるったい。」
裕一「試合 明日でしょ? あ… 諦めて。」
田中「そげなわけには いかんたい!」
裕一に話しをする田中
田中「俺は… 九州の片田舎で生まれました。 中学時代は 野球ば やっとって 甲子園行けるかって期待されとりました。」
田中「そん原動力が… 幼い頃から一緒に遊び ずっとバッテリーを組んどった 清水誠二でした。」
田中「雨で… 練習がなくなった時の出来事です。 俺たちは 公園で… キャッチボールば しておりました。 その時 俺は わざと… 遠くに… フライば投げたとです。」
田中「清水は そん玉ば捕ろうとして 足に… 大きな… 深い傷ば負ってしまいました。 麻酔が うまく効かんで 清水の口には 手拭いが押し込まれました。」
田中「『何か必要なもんは?』と聞くと 清水は…『ラジオ』っちゅうとです。 早慶戦ば 痛みに耐えるために 聞かせてくれっちゅうとです。」
田中「清水は 手術ば耐えました。 ばってん… 足は元どおりにならんで… 学校も やめました。 しばらくして 清水に会いました。」
田中「『俺に何かできることなかね?』と聞くと 清水は言いました。『別になかっちゃけど… 強いて言うなら 早稲田ば勝たせてくれや。 それが1番の楽しみやけん』って。」
田中「俺は そん時 気付いたとです。 野球ば頑張っとる人のラジオが聞いて 頑張れる人がおる。」
田中「頑張ることは… つながるやって。 そしたら… 俺にできることは何か? 野球の技量はなか。」
田中「選手が活躍するために… 応援することしか ないんじゃないかって思って。 なのに… 全く勝てん。 清水の申し訳のうて…。」
裕一「何で 僕なんですか?」
田中「あっ…。 俺は器用なやつは好かん。 先生は… 不器用やけん。」
裕一「何だ… 賞取ったからじゃなかったのか。」
田中「何ですか?」
裕一「いやいや… いいんですよ もう。 忘れて下さい。」
田中「先生… 書いて下さい。 清水のために。」
裕一「明日までだね?」
田中「はい!」
裕一「はい。」
玄関で聞いている音さん
田中「先生…。」
裕一「はい。」
田中「ちなみに…。」
裕一「はい。」
田中「こん食べ物は何ですか?」
裕一「シュークリーム。 食べてみて。」
田中「アハハ。」
裕一「どう?」
田中「うまか~!」
裕一「うまか~!」
田中「うまか…。」
裕一「フフフフフ」