喫茶店 バンブー
保「カフェーの女給? 音さんが?」
裕一「ああ 僕はなんてバカなことを…。」
恵「どうして? 何があったの?」
裕一「いや…。」
回想
音「本を読むより 実践で学ばんと。」
裕一「じ… 実践?」
音「男女の社交場といえば カフェーでしょう。 『椿姫』のヴィオレッタも 社交場の華だった。」
音「ねえ 裕一さん。 裕一さんから 木枯さんに頼んでもらえん? あの人 顔が利くんでしょう?」
裕一「た た… えっ? 頼むって… な な… 何を? うん? な… 何を?」
回想終了
恵「なるほど…。」
保「なんという行動力…。」
恵「しかも 発想が独特。」
裕一「いや… カフェー行った旦那さんを怒る 奥さんの気持ちも よく分かりました。」
恵「心配いらないわよ。 だって 1週間の臨時雇いでしょ?」
保「裕一君も行ったことある店なんだろ?」
裕一「いや~音の夢に協力したくて つい 協力して許しちったけど…。 ああ 僕はバカだ~。 あ~ やっぱ 止めるべきだったな~! う~ん…。 バカだな~…。」
カフェー パピヨン
愛子「岡崎社長は いつも おしゃれですよね。」
岡崎「うん?」
エミ子「このネクタイ すてきです。」
岡崎「そうか? ハハッ。 本当に?」
希穂子「ええ とってもお似合いです。」
岡崎「希穂子ちゃんも そう思うかい。 ハハハハハ…!」
ママ「音江ちゃん。」
音「あっ はい。 とてもすてきです… 毛虫みたいで。」
岡崎「け… 毛虫?」
ママ「ちょ… ちょっと!」
音「あっ… 実家の庭に よくいたんです。 焦げ茶の上に 赤い線が入ってて 葉っぱの上を モソモソ~って。」
ママ「音江ちゃん。 すみません。 まだ この子 慣れてないものですか。」
岡崎「ハハハハハ…! 君 面白いね~。 新人さんだよね? ハハッ。 これ 取っておきなさい。」
音「ありがとうございます。」
岡崎「ちょっと厠へ。」
ママ「岡崎さんに お酒をお願い。」
愛子「はい。」
ママ「何なの? 毛虫って。 失礼じゃない!」
音「あっ いえ… 逆に でも それ 毛虫に失礼じゃ…。」
ママ「口答えしない。」
音「すいませんでした。」
ママ「あのね 思ったことを 口にしているようじゃ この世界は務まらないの。 もう少し頭を使ってちょうだい。」
客「ママ! ママ ちょっと。」
ママ「は~い。 ただいま。」
客「ママ!」
ママ「はい。」
音「お客様には常に笑顔で。」
希穂子「ここは夢を売る場所だからね。」
音「勉強になります。」
希穂子「フフッ 音江さんってユニークね。」
音「えっ ユニーク? ユニーク… フフフ。」
古山家
裕一「あっ 音! 音… えっ えっ えっ えっ?」
音「裕一さん ただいま。 フフフフ…。」
裕一「臭っ。 えっ? 酒飲んだの? ちょ… 立って 音。 立って せ~の! そう そのまま! そのまま…。」
音「お~。」
裕一「ねえ 大丈夫? そ… そんなに飲んだの? 座って 座って。」
音「まあ… 少しはね。 少しはね…。」
裕一「上着も脱ごう。」
音「だって…。」
裕一「えっ 何で立つの?」
音「何てったって夢を売る場所だから。」
裕一「音… 音… お酒なんて喉に悪いからさ あそこはね もう辞めた方がいいと思うんだよ。 それより 歌の練習した方がいいよ。」
音「私 決めた。」
裕一「えっ?」
音「私… 社交場に咲く花になる。」
裕一「えっ? えっ あの… 駄目だよ? いや あの… ううん 音 音…。 ねっ 音… 分かったから 分かったから…。」