三朗「ちゃんと承諾取ったから。 母さんのこと… 頼んだぞ。 聞いてんのか?」
浩二「聞いてるよ。 何だよ… 口約束ばっかし…。 だから だまされんだよ。」
三朗「おめえは だまさねえ。」
浩二「分かんねえぞ。 長生きしねえと 何すっか分かんねえぞ。」
三朗「フフフフ…。」
浩二「笑い事じゃねえって。 俺のこと ちゃんと見張ってろよ。 もっと… もっと長生きしてくれ。 生きてくれ…。」
三朗「おめえ… いいやつだな。」
回想
三朗「おめえらのおかげで… いい人生だった。 ありがとな。」
裕一「父さん…。」
三朗「ありがとう。」
回想終了
その夜 三郎は安らかに息を引き取りました。
喜多一を出発の日
裕一「お世話になりました。」
まさ「いつでも帰ってきてね。」
音「はい。」
まさ「華ちゃん また来てね。」
浩二「兄ちゃん…。 俺 りんご やんだ。 うまいの出来たら 送るよ。」
裕一「ありがとう。 浩二 元気でな。」
浩二「うん。」
裕一「母さんもね。」
喜多一を出た裕一は あの人のところへ やって来ました。
裕一「お… 伯父さん あの… お… お花 ありがとうございました。」
茂兵衛「行かなくて悪いな。 どうせ あの世で会えっから。」
音「アハハハ…。」
裕一「いえ… あっ。」
裕一「ち… 父の生前は ご心配やご迷惑を おかけして申し訳ありませんでした。」
裕一「と… というより あの… 僕が 本当に身勝手で 伯父さんの期待に沿えなくて ご… ごめんなさい。」
茂兵衛「いいだろう? この曲線。 本当は ずっと これがやりたかったのよ。 没頭できるってのは いいことだな~。」
茂兵衛「ちっとも飽きねえ。 好きなことだけで飯食えるやつなんざ 一握りだ。 せいぜい気張って かみさんと子どもに 苦労かけるんでねえぞ。」
裕一「はい!」
茂兵衛「うん。 ほれ… 夫婦茶わんだ。 持ってけ。」
裕一「あっ…。」
音「ありがとうございます。」
裕一「ありがとうございます。」
裕一「あれ? これ…。」
音「あの これ どっちがどっちですか?」
裕一「どっちですか? これ…。」
茂兵衛「見れば 分かっぺ!」
音「ハハハハ…。」
裕一「フフフ…。」
三郎さん 最後までいい人だったな。