嗣人のアパート
嗣人「お帰り。」
環「ただいま… 今 逆だけど。」
嗣人「どうだった?」
嗣人「またチャンスはあるよ。」
環「違うの…。 合格したの。 私… オペラハウスに立つ。」
嗣人「フフフフフ…。」
環「どうしたの?」
嗣人「アハハ… フフフフ…。」
環「嗣人さん?」
嗣人「傑作だ! 俺が… 街のカフェで個展をやらないか って言われて いい気分になってる時に 君は オペラハウスだ。 バカみたいだ…。」
嗣人「何を喜んでるんだ! 俺と君の何が違うんだ? 俺は…。(絵を床に叩きつける)」
環「やめて! やめて… やめて!」
嗣人「くそ くそ くそ…。」
環「嗣人 しっかりして! あなたには才能がある!」
嗣人「うわべの言葉なんか いらない!」
環「本当に思ってる! 心底思ってる!」
嗣人「どうして分からないんだ…。 その優しさが人を苦しめるのに! どうして… どうして…。」
嗣人「君の… 失敗を願ってる。 どんなに喜ぼうとしても… 心の奥底から嫉妬があふれてくる。」
嗣人「俺は… 君といる俺が嫌いだ。 君といると… 俺は どんどん やなやつになる。 俺は… 君という光の影でいるのは… 耐えられない。」
嗣人「環…。 歌を… 歌を諦めてくれ…。 君を愛してる。 頼む… 頼む…。」
カフェ
フィリップ「おめでとう!」
環「あったかい」
フィリップ「どうするんだい?」
環「私は光でいたい 傲慢ですか?」
フィリップ「自分に嘘をつくことが 最大の罪です それでいい それが君の人生だ」
パリ 春
蝶々夫人が環によってよみがえる オペラハウスに続きニューヨーク公演も成功!
カフェ
ピエール「この絵を譲ってもらえないか?」
フィリップ「批評家のピエールだ」
嗣人「…その絵はだめです」
ピエール「他は凡庸だが この絵だけは素晴らしい」
嗣人「ありがとう でもその絵はだめですだめです」
ピエール「そう残念だ 僕は君のことをこき下ろしたが この絵が描けるなら まだ将来はあると思うが」
嗣人「では無理です もうそんな女性にはめぐり逢えませんから」
ピエール「そう…残念だ」